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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章              

 4階建てのコンドミニアムを1棟借りしているので、今は正直 淋しい。

 けれど個人戦が始まったら、宇野 昌麻と本郷 理香、アイス・ダンスの安方・鈴木組も、ペアの下城・成田組も揃い、きっと賑やかになるだろう。

 『アイスハウス2』と名付けられたこの拠点には、フィットネスジムがあり。

 傍には貸切に出来る国際基準のリンクがある。

 そして何よりも、1人ずつに個室があるのが嬉しい――狭いけれど。

 1階:食堂・ミーティングルーム・応接室

 2階:男性陣

 3階:女性陣

 4階:チームスタッフ等

 取材規制を敷いてあるので、この周りで取材陣に取り込まれることもない。

(正直、少しは選手村に滞在したいけど……。我が儘言っちゃ、だめだよね~)

 マシになった時差ボケで、ヴィヴィは皆とリンクへと向かい、それぞれ調整を行った。

 夜から始まる団体戦に向け、応援準備を整えた一行。

 午前中の公式練習の為に、ミュンヘンに前入りしていた羽生と棚橋・藤堂組と落ち合う。

 会場は、アイス・ガーデン。

 ミュンヘン市内に五輪の為に建設されたリンクは、近代的で美しい。
 
 2018年のグランプリ・ファイナルで、一度経験していた。

 刻々と団体戦の開始時間が迫り、バックヤードでは日本チームの皆が円陣を組む。

 団体戦へエントリーされたのは、

男子シングル――

 羽生(はぶ) 結弦(28)

 篠宮 クリス(19)

女子シングル――

 宮平 知子(24)
 
 篠宮 ヴィクトリア(19)

アイス・ダンス――

 マリア 渋谷(23)
 
 アルフレッド 渋谷(27)

ペア・スケーティング――

 棚橋 成美(31)

 マーヴィン 藤堂(33)

――以上8名。
 
 互いの肩を組み合う腕の先――それぞれの指には、金の指輪が光っていた。
 
 4年前、平昌五輪でそれぞれが着けていた指輪。

 奇しくもその時と同じメンバーでこの場に揃えた事を、皆が皆 誇りに思っていた。

「4年前よりも、一段でも上に昇る」と、羽生リーダー。

「各々がベストを尽くせば、やって出来ない事は無い」と、宮平サブリーダー。

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