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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章
画面がミュンヘンのスタジオから、会場のアイス・ガーデンへと切り替わる。
「では、会場の雰囲気を見てみましょう。徐々に男子選手が、リンクサイドに集まり始めましたね?」
「日本の男子フリーは、篠宮 クリス選手です。落ち着いていますね。集中している様子が見受けられます」
広大なリンクの入り口前には、各国の選手団が応援するスペースが区切られており、日本を除く4ヶ国はほぼ関係者で埋まっていた。
「先ほどちらりと映りましたが、日本の応援をする選手達も、応援席へ集まり始めましたね?」
そう言った途端、日本の応援席で、スマホを弄る棚橋と羽生が映り込む。
「あ、今、棚橋選手が写真撮ってますね……。ふふ、記念にということでしょう」
笑い声の杉浦に、工藤も楽しそうな声を上げる。
「羽生選手も映りました。初日の団体戦SPではノーミスで完璧な滑りを見せ、日本チームに貴重な10ポイントを獲得してくれました。今日はリーダーとして、皆の応援に回ります」
画面がスタジオに切り替わり、選手の写真が貼られたフリップがズームされる。
「今朝、公式発表されました、団体戦の出場選手です。
男子FP 篠宮 クリス、
女子FP 篠宮 ヴィクトリア、
アイス・ダンスFD マリア・アルフレッド 渋谷組」
「男子シングルのフリーが始まる場内、だんだんと雰囲気も盛り上がってきました。今、ウォームアップが始まりましたね。それでは団体戦、男子フリーをご覧頂きましょう」
リンクサイドでヴィヴィが祈る中、
アイス・ガーデンの観客席で、日本から駆け付けたばかりの父・グレコリーと匠海が見つめる中、
そして応援席で、日本チームの皆が声を枯らせながら声援を送る中、
クリスはほとんどミス無く、FP『A songs for chris』を滑り終え。
断トツの1位に立ったクリスにより、日本チームには10ポイントが加算された。