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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章              

 なんと、2人は物凄い強行スケジュールでこの地を訪れていた。

 本日の12:20に羽田を発ち、17:20にミュンヘンに降り立ち。

 双子をそれぞれ観戦したのち、

 ミュンヘンを23:30発の飛行機に飛び乗り、翌日の17:55に羽田に到着するという。

 往復とも約12時間掛かるので、いくらファーストクラスでの移動とはいえ、疲れるだろう。

 とんでもない弾丸旅程だが、2人はそれでも「どうしても、五輪は現地で観たいから!」と、嫌な顔一つせずに双子を応援してくれたのだった。







 団体戦の興奮の熱も冷めやらぬ翌日、2月10日(金)。

 ヴィヴィは機上の人となっていた。

 隣に座っているのは牧野マネージャー。

 クリス達は5日後に控える個人戦に向け、現地で調整を続けるからだ。

 ミュンヘンを15:30に発った飛行機は、2月11日(土)の11:20に羽田に着陸した。

 報道陣に囲まれたヴィヴィは、牧野マネージャーの誘導のおかげで、最短時間で取材を終え。

 そしてその足で、なんと東大へと向かった。

 何故って?

 奥さん~、学期末試験の追試を受けるためですよ。

 もう土日なんて関係無しで、双子は詰められるだけ追試を詰め込んで貰っていた。

 翌日の日曜日は勿論、2月14日(火)までの4日間、朝から夕方までびっちりの追試。

 周囲が「バレンタイン♡ バレンタインっ♡」と浮き足立っている中、

 ヴィヴィは独り、空き教室に教官付きっ切りで試験に明け暮れていたのだった。
 
 仕舞いには、

「ハイホー、ハイホー、仕事が好き~♪

 (口笛)ヒュ、ヒュヒュヒュ、ヒュヒュヒュヒュ♪

 ハイホー、ハイホー♪」
 
と、東大受験を彷彿とさせる恐ろしい歌まで歌い始めたヴィヴィを、朝比奈は至極心配そうに見つめていたのだった。




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