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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章              

 2月15日(水)。

 たった4日間だけ日本で過ごしたヴィヴィは12:20、またミュンヘンへ飛び立った。

 時差が△7時間もあるので、現地時間の17:20には到着できる。

 そして今回は、牧野マネージャーだけでなく、父と匠海も一緒だった。

 本日の19:00からスタートする、個人・男子シングルSPを観戦する為に。

 飛行機の中でも、コーチ陣から逐一クリスの様子がメールされてくる。

 朝の公式練習でSPの音掛けをし、4回転サルコウを成功させたこと。

 疲れも見せず元気なこと。

 それらの情報にほっと胸を撫で下ろし、父と兄にも状況を報告する。

 そして12時間のフライトの末に降り立った、ミュンヘン国際空港。

 ミュンヘン市内にある会場――アイス・ガーデンへとタクシーで直行し、ヴィヴィは父と匠海と別れた。

 IDカードを認証させて、バックヤードへと入る際、

 ヴィヴィは咄嗟に4年前を思い出し、苦笑してしまった。

 一緒にいた牧野マネージャーも、ヴィヴィに気付き声を上げて笑う。

「あはは。今回は、ミュンヘン市街地を走る事も無さそうだな?」

「はい」

 4年前の平昌五輪。

 クリスのSPのリンクサイドに立てなかったヴィヴィは、FPの滑走時間ギリギリに現地に到着し。

 この牧野を道連れに、夜の平昌の街を駆け抜けた。

 今となっては笑い話のひとつともなった、良い思い出だ。

 午前中の公式練習の後、クリスは近くの選手村で休んでいたらしい。

 ちょうどヴィヴィが到着するのと時を同じくし、クリス、ジュリアン、柿田トレーナー達が現れた。

「クリス~~っ 元気そう!」

 ヴィヴィは喜びの声を上げながら双子の兄に駆け寄り、その胸の中に飛び込む。

「ヴィヴィ……。会いたかった……」

 そう囁きながらぎゅうと抱き締め返してくれるクリスに、ヴィヴィは心の底からほっとした。

 離れていた4日間、毎日Skypeで顔を見て喋ってはいたが、双子は互いに寂しかった。

 なにせ双子はいつも一緒だから。

 大学やリンクはもちろん、スケートの試合は常に同じ大会に出続けて来た。

 まあ――そうすれば、ジュリアンの帯同も1回で済むからだが。

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