この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章              

 額に唇を押し当てられ、ふっと振り仰いだ時、

 ばちりと合ったその灰色の瞳に浮かんでいたのは、何とも言い表しようのない蠱惑的な色み。

 演技後に抱いた尊敬の念が、若干 畏怖の念へと替わった気がした。

 クリスの隣に腰かけたヴィヴィは、

「お水……」

と耳元で囁かれ、文字通りびくっと飛び上がった。

 不思議そうな瞳で見つめてくるクリスに、ヴィヴィは慌ててペットボトルのキャップを外して手渡す。

 何と言うか。

 この五輪で、双子の兄は大人の男へとぐんと成長した気がした。

 大きな舞台は人間を育てる――というのも、あるのだろうが。

 4年前の今頃。

 SPで2位と出遅れ、

 FPの夜に平昌の街をダッシュして、ギリギリセーフと滑り込んだヴィヴィに、

『遅い、よ……』

 そう拗ねて甘えた声を上げた双子の兄とは、雲泥の差を感じていた。

 返されたペットボトルに蓋をしながら、ヴィヴィは内心腹を括った。

(クリス……。クリスが将来、どんだけ悪い男になっても、ヴィヴィは、大好きだからね――っ!!)

 ヴィヴィがそんな阿呆な事を心の中で誓っている間に、クリスのFPの得点がアナウンスされ。

 そして、

 歴史上初となる、日本選手の1・2フィニッシュが確定した瞬間に、ヴィヴィは立ち会ったのだった。







 世界中を沸かせた男子シングルFPの翌日、2月17日(金)。

 その頂点に立ったクリスは、父と匠海と一緒に、とっとと日本へ帰国してしまった。

 彼にもこれから、地獄の追試期間が待ち受けている。

(まあ、クリスは天才だから、何てことないだろうけど……)

 ヴィヴィはというと、公式練習に参加した後は、夜から行われたアイス・ダンスのSDを応援に行った。

 関係者席で羽生と宮平を見つけ、日本代表の渋谷兄妹、安方・鈴木組をしこたま応援した。





/2774ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ