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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章
そしてFPの滑走順は、SP終了直後に行われた抽選で決まった。
ちなみにFPの滑走順は、出場する24名をSPの順位順に6名ずつ4グループに分け、抽選する。
結果、ヴィヴィのFPの順番は、第4グループの6番目(最終滑走)となった。
翌日、2月21日(火)。
ミュンヘンから70km離れたローゼンハイム。
車なら50分で到着するその地にある “アイスハウス2” では、嬉しそうな声が上がっていた。
「ダッド~~っ!」
父・グレコリーの姿を目にした途端、ヴィヴィはソファーから立ち上がり、その胸に飛び込んだ。
「ああ、My sweet bamb(私の可愛い小鹿ちゃん)~~!! 元気だったかい?」
娘の細過ぎる身体を持ち上げ、ぶんぶん横に振って喜びを表現する父。
「ん~っ 超・超・元気!」
「はは。それは良かった! 日本でLIVEでSP観てたよ、よく頑張ったね~」
父のその労いの言葉に、ヴィヴィは緩みきった顔で大きく頷く。
「えへへ~。明日も頑張る~」
女子のFPは、SPから1日空けての試合日程だった。
なので今日、このコンドミニアムには、宮平と本郷も滞在している。
試合の終わった女子以外の選手は、ほとんの者がミュンヘン市内の選手村へと移動し、
羨ましいことに、他の競技を観戦しているらしい。
「ダッド……、後がつかえてる……」
そうぼそりと掛けられた声に、父は「はて?」とわざとらしく首を捻る。
「おかしいな? なんだか幻聴が聞こえるよ。ほうら、ヴィヴィ~♡ ダッドに可愛い顔を、よおく見せておくれ?」
息子をおちょくる父に、
「……~~っ ダッド!」
ついに痺れを切らしたクリスが、そう唸り声を上げた。
「あはは、クリスを怒らせたら怖そうだ」
可笑しそうに笑いながら娘を解放した父。
「うふふ。クリス~~っ!」
5日ぶりの再会を喜び、双子はひしっとハグし合う。
父とクリスは、本日の17:20にミュンヘン国際空港に降り立ったばかりで。
「ヴィヴィ……。僕がいなかったのに、SP、よく頑張ったね……?」
そう囁くクリスの声は、申し訳無さそうだった。