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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章
今シーズン、ヴィヴィはなかなかクリスのリンクサイドに立てなかったが、
クリスは先に試合が終わるというのもあって、毎回ヴィヴィの傍にいてくれていた。
「ううん。なんたってヴィヴィ、もう20歳だもん!」
そう強がってみせたヴィヴィに、
「いやまだ、2ヶ月以上、先だけどね……」
誕生日は5月だと、クリスは静かに突っ込んでおく。
「なんてね……。ヴィヴィ、クリスと離れたこと、今までほとんど無かったから……っ さみしかったよぉ~~っ」
途端にくしゃりと歪んだヴィヴィの顔を、クリスは慰める様にその胸に抱き締め直す。
「ヴィヴィ……、僕もだよ……。ああ、可愛い……っ」
応接室のど真ん中で、いつまでも抱き合う双子に、
「ねえ、グレコリー? これ、いつになったら終わるのかしら?」
「さあねえ。1時間後かなあ?」
両親は自分達もいちゃつきながらも、双子をからかっていた。
ようやく再会の喜びも落ち着き、4人は応接室のソファーへ座ったのだが、
「あれ? そういえば、お兄ちゃんは?」
ヴィヴィは不思議そうに、父とクリスを交互に見つめる。
「え……? 兄さん、2日前にこっちに着いたんでしょ……?」
クリスの言う通り、匠海はヴィヴィのSPを観る為に、その日に現地入りしていた。
「うん。だから「この辺りで、5人でディナー採ろう」って、2日前にメールが来てたんだけど?」
ヴィヴィはグレーのサロペットのポケットから、スマホを取出して見せる。
「あ~~……、匠海はねえ、昨夜の便で帰国したの」
母が発したその言葉に、ヴィヴィは「へ?」と目を点にする。
「何かあったの……?」
クリスがそう尋ねれば、
「お世話になってる方が、緊急入院したんですって。残念だけれど、明日のFPには間に合わないんじゃないかしら?」
ジュリアンの説明に、ヴィヴィの灰色の瞳がはっと見開かれる。
「マム、その方、どなた?」
「え?」
「ヴィヴィ、知ってる方かもしれない。お名前は?」
匠海に紹介された経営者や財界の方だとしたら、朝比奈に連絡し、お見舞いの花等を贈る必要があった。