この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章              

「ヴィヴィ、本当に残念だけれど……、今回は――」

「じゃあ、ヴィヴィ、出られるんですね? 試合」

 真っ直ぐに母の瞳を見つめて確かめるヴィヴィ。

「………………」

 目の前に立ったジュリアンはその迫力に押し黙り、娘を見下ろしていた。

 その間に割って入るように、右腕が掴まれ。

 振り向くと、クリスが強張った表情で叱りつけてくる。

「ヴィヴィ。いい加減に――」

「じゃあ、クリスは?」

 真顔で問い掛けてくる妹に、クリスは腕を掴んだまま「え?」と呟く。

「クリスなら、諦め切れる? クリスなら、胃痛ごときでオリンピック、諦められるのっ?」

 それは八つ当たり以外の何物でもなかった。

 双子の兄には何の落ち度もなくて、

 それどころか、自分の身体を第一に心配してくれているのに。

 そう解っていても、ヴィヴィはどうしても引き下がる訳にはいかなかった。

「………………」

 まるで恫喝された子供の様に凍りついたクリスから視線を外し、

 ヴィヴィは医師に向かって左腕を差し出す。

「公式練習に行きます。点滴、抜いて下さい」

 強情に言い張るヴィヴィに対し、困惑して最高責任者のコーチを振り返る医師。

 ジュリアンはクリスの腕を掴んで解かせると、娘にずいとにじり寄る。

「ヴィヴィ。例えどんな結果になっても、後悔しないのね――?」

 自分のより緑がかった瞳の強さに負けぬ様に、ヴィヴィは瞳に力を込めて言い返す。

「はい。試合に出なくて後悔するより、無様な内容でも出場したほうが、よっぽど幸せです」

 その言葉に、嘘偽りは一切無かった。

 まだ青白いままの娘の頬を、ジュリアンはぺちぺちと掌で叩き、

「解ったわ」

 そうきっぱりと口にした母は、自らを鼓舞する様にしゃんと背を伸ばした。 

 ジュリアン自身、五輪で銀メダルにまで上り詰めた元選手。

 娘でもあり生徒でもあるヴィヴィの気持ちが、痛いほど解るのだ――酷な事に。

「マム……」

 戸惑った声を上げるクリス。
 
 娘の選択を尊重した母親の仕事は早かった。

/2774ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ