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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章              



「ヴィヴィ――っ!!」



 広大なリンクに響き渡る、女性の怒号。

 その大声に呼び起され、はっと顔を上げたヴィヴィの視線の先には、

 一面の白い氷と、

 氷上に倒れて動かない自分を、心から心配そうに見つめている、幾つもの瞳があった。

「……――っ!?」

 咄嗟に自分の置かれた状況を把握したヴィヴィは、痛みも忘れたように飛び起きる。

 先程まで無音だった鼓膜が、途端に聞き慣れた音楽を捉えた。

(後、サルコウだけ……っ)

 何とか氷を蹴り、助走を付けて飛び上がれたのは、たったの1回転だったけれど。

 本来なら、リンク全体を使ったスパイラルから入るべきジャンプだったけれど。

 頭を切り替え、遅れを取らずステップ・シークエンスへと入る。

 脚が重い。

 自分でも嫌と言うほど判る、浅く甘いエッジ。

 不甲斐無い自分の一挙手一投足に、

 ジャッジの視線が、

 超満員の観客の視線が、

 テレビ越しの視聴者の視線が、突き刺さる。

 それでも何とか、リンクいっぱいを使って踏み分ける。

(……疲れた……)

 ヴィオラの旋律が途切れ、その後に響き渡る4の刻を知らせる鐘の音を聞き、

 残りの要素が2つである事をなんとか判断する。
 
 フルートの穏やかな音色に乗せ、イナバウアーで移動しながら、

 どうしてもこれだけは完璧に決めたいと、決死の覚悟で飛び上がる。

 上半身を大きく後ろに反らしたバレエジャンプ。

 この日の為に用意した新たな衣装は、

 ここで背のV字に縫い留められた幅広のフリルが、美しくはためく様、

 デザイナーが何度も試行錯誤してくれたもの。

 日頃からバレエで鍛えられていたそのジャンプは、見事ヴィヴィの理想通りの軌跡を描き、

 トウを片手で掴んだスパイラルは、若干ふら付き速度が遅いながらも、

 上半身を引き上げながら、柳の様に長い両腕を運ばせる。
 
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