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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第112章
もう指一本動かすことさえままならず、
遠退いて行く意識の中、
父の言葉が、脳裏を過ぎる。
『ヴィヴィ。
匠海の恋人が妊娠した。
今、3ヶ月ちょっとだ。
昨日、瞳子さん――恋人の名前なんだか、
腹痛を訴えて病院に担ぎ込まれたらしくて。
だから匠海は急遽――』
そこで途切れた、父の慎重な声音。
そして、続いて囁かれた、
その声の主は――。
「だから急遽、
俺はお前を捨てて、日本へ帰国したんだ――」