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第113章 　 　　　　　　　

　２月２４日（金）、ミュンヘン五輪　最終日。

　２日間入院したヴィヴィは、父の滞在するホテルへと移動した。

　病院の前に取り囲む報道陣を、牧野マネージャーが「後日、詳細を説明します」と制し。

　警備員に庇われながら何とかタクシーに乗り込めた程、自分を取り巻く周囲の環境は変化していた。

　絶食と薬の投与で胃の状態は回復し。

　ヴィヴィは自ら請うて、父の説明を受けた。

　個人戦５位のヴィヴィが出る筈だったエキシビションには、６位の宮平　知子が繰り上がって出てくれたこと。

　病状については混乱を避けるため、スケ連の小林強化部長の口から一連の説明がなされたこと。

　２大会連続の金メダルという快挙を成し遂げたクリスに、総理大臣から直接電話が繋がり、

　彼に対する称賛の言葉と、妹の安否を気遣う言葉があったこと。

　それらの説明を受け、ヴィヴィは急遽　自らの口で説明する義務があると判断した、が。

「さすがに病み上がりでの記者会見は許可出来ない。代わりに動画をＨＰで公開するから」

　コーチ陣とスケ連のその助言に従い、動画を撮った。

　ホテルの１室でホームビデオにて撮影されたそれは、次の通り。



「この度、ご心配ご迷惑をお掛けした事実を、深く受け止めています。

　個人戦ＦＰの内容には自分自身、失望しています。

　沢山の方に頂いた応援を、最高の形でお返ししたかったのですが、

　このような結果になり……。

　今は正直、心の整理が付いていない状態です。

　皆様の前に出て、お話をしたいのはやまやまですが、

　大学の進級試験が控えていること、

　また、のちに控える世界選手権に万全の態勢で臨む為、
　
　大会が終わるまでは、この様な形でお話をさせて頂きました。

　私事と我が儘でご迷惑をお掛けします。

　次に説明させて頂くまでに、自分の頭と心の中を整理するように努めます。

　沢山の応援、励まし、次への期待――届いています。

　とにかく、今自分がすべき事に精進することが、

　先に進める唯一の方法だと信じて励みますので、

　しばらくの間は見守り、応援を頂けると嬉しいです」