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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

「クリス、バス浸かってゆっくりして? ヴィヴィ、さっき暖まったら、結構楽になったよ?」

「うん……、上がったら、一緒にディナー採ろう……?」

 ヴィヴィは昨日から、消化の良い粥を口にし始めていた。

 掌を離しながら頷いたヴィヴィに、クリスはその頭をポンと撫で、書斎を後にした。

 デスクに広げたままの書籍に視線を落とし、また続きを見直そうと椅子に腰掛けようとした、その時。

「……っ ……よくも――して……っ!!」

 微かに鼓膜を震わせた言い争う声に、はっと顔を上げ。

 まさかと思い書斎の扉を開けると、2人の兄が目の前のリビングで対峙していた。

「………………っ」

 12日ぶりに対面した匠海の姿に、その場に凍り付くヴィヴィ。

 けれどその視線の先では、激高したクリスが匠海に掴み掛って行き、

「オリンピックを……っ 五輪を何だと思ってんだよっ! ヴィヴィがこの4年間っ 血反吐を吐く思いで頑張ってきた事……、全部ぜんぶ、無駄にしやがって――っ!」

 スーツの襟元を締め上げて叫ぶクリスに、ヴィヴィは驚愕し過ぎて。

 けれど、双子の兄の右腕が、大きく振り被られたのに気付き、

「クリス……っ!? や、やめて……っ」

 咄嗟に兄達の間に割って入ったヴィヴィは、クリスの右腕を必死に胸に抱き込み、何とか制止する。

「……――っ」

 息を呑んで自分を睨み下ろしてくる双子の兄。

 やがて、匠海のネクタイを掴んでいた左腕を乱暴に解くと、ヴィヴィの拘束も解いて自分の部屋へと戻って行く。

 まさかのクリスの暴挙に混乱しつつ、

 けれどやっと会えた匠海に、顔を見て直接訊ねたい事も山ほどあって。

「………………」

 一瞬の躊躇の後、強張った表情を浮かべる匠海を一瞥し、ヴィヴィはクリスを追った。

 紺色のファブリックが印象的なリビングには、その姿は無くて。

 唯一開かれていたバスルームを覗けば、洗面台に両手を突いて項垂れているクリスが、そこにはいた。

「……ごめん、なさい……っ」

 もうその言葉しか、思い浮かばなかった。

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