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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章
その後に映り込んだのは、更に大人びた高校生のその人。
『ヴィヴィ、もう、一緒にお風呂には入らないよ』
困った顔で諭してくる相手に、視界が左右に揺れる。
『どうしてって……、分かるだろう? お兄ちゃんを困らせないで』
更に激しく左右に振れる視界。
『ああもうっ とんだ我が儘娘に育ったなぁっ! ったく……』
苛立ちを含んだ声音に、徐々に落ちていく視界。
『あ、こら、泣くなっ ずるいぞ! あ゛~~、しょうがいないなぁ……』
視界が切り替わり、目の前の柵の先――
漆黒の乗馬服に身を包んだその人は、巨大な馬体と一緒に、ひらりと障害を飛び越えていく。
『カッコいい~~っ!!』
『でしょでしょ? 学習院の篠宮君っていうの! ずっと目を付けてたの~~♡』
すぐ傍で騒ぐ黄色い声に振り返れば、学生服に身を包んだ女子高生達がいて。
『えっ 嘘っ こっち、来る~~っ!?』
『きゃあ~~っ リアル王子様~~っ!!』
騒がしい声に被さる、ブルルッという馬の嘶き。
『ヴィ~ヴィ。見ててくれた?』
漆黒のヘルメットの下、白い歯を輝かせながら自分に問うその人。
激しく上下に振れる視界。
そして何故か視界一杯に、濡れたピンク色の物が襲ってきて。
『あははっ ヴィヴィの顔、べったべた! あ~~、泣くな。ほら、おいで』
馬に顔中舐められたヴィヴィは、馬から降りたその人に、両脇を抱え上げられる。
纏っていた白タイを解き、手早く顔を拭ってくれる優しい手。
『こいつもヴィヴィの事が大好きだから舐めちゃったんだよ、許してあげて?』
栗毛の長い鼻面を愛おしそうに撫でるその人。
大きく首肯すれば、視界はまばゆいそこから、急に夜の闇にとって変わり。
『俺は、嫌だ……』
潮騒と共に届くその声は、心底苦しげで。
『俺はまだ……、ヴィヴィから卒業できそうも、ない……』
覗き込んでくる灰色の瞳は、まるで捨てられる間際の仔犬の様に淋しげで。
ゆっくりと閉ざされていく視界。