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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 『鞭』を与えられた結果、兄を拒絶していた自分は、

 1ヶ月もの間、ずっと誠意を見せて待ってくれた兄の、その愛の言葉を受け続け、

 その結果――兄への恋心を認め、匠海の自分に対する気持ちも信じる事が出来た。

 そしてその要因として、兄のEDの事実はかなりのウェイトを占めていた。

 なのに今、

 匠海は他の女を孕ませ、しかもそれは計画的になされたものだった。

 自分以外の女に触れ、

 その躰を愛撫し、

 互いの生殖器を繋ぎ、

 吐精にまで至った。

 それが1度や2度で済む筈が無い。

 何日も躰を重ね、その結果妊娠に至ったのだ。

 握り締めた指が白く、血の気を削ぎ落とし、

 白い歯が削れそうな嚙み締める音が、細い顎から零れ落ちる。



『ずっと……、一緒にいよう……』

『愛しているんだ。ヴィクトリア……っ』



 兄と恋人になれた以降、

 贈られた愛の言葉は、もう数えきれないくらいあった。
 
 その一つひとつを思い返しながら、

 ヴィヴィは日々、幸福を与えてくれる匠海に感謝してきた。

 血の繋がった妹で、結婚も妊娠も出来ない自分を永遠の伴侶に選んでくれた、愛しい恋人。

 決して疑わなかった、2人で歩み続け、添い遂げる未来。

 ヴィヴィはヴィヴィなりに必死に匠海を愛し、身も心も捧げてきた。

 なのに、

 全身全霊を傾けて育んだ恋の、

 その結末が “これ” なのだろうか――?





 泣いて。

 泣き疲れ、意識を失う様に眠りに落ち。

 その度に、幾度と無く繰り返される悪夢。

 夢の中の自分は、とても自分の心に正直だった。

 口汚い言葉で兄を罵り、

 蔑み、

 その人格までをも否定していた。
 
 自分の過去の狂行は棚上げし、

 ただただ匠海の事だけを詰り、責め続けていた。


 

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