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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章
「兄さん達、赤ちゃんの性別は調べてないの……?」
いつも通り淡々としたクリスの問いに、
「ああ、生まれてくるまでのお楽しみだ」
そう返した匠海の声が、心底嬉しそうなもので。
ここ何日も、自分に愛を囁くそれとは、あまりにもかけ離れていて。
「………………っ」
ジンと痺れ始めた下目蓋に、何度も瞬きをして気を散らす。
しかし、どうしても滲みそうになる涙は、
意外な言葉で引っ込まされる事となる。
「私は女の子がいいわ」
その声がした方に、ぱっと顔を上げる。
「……え……?」
瞳子の発したその返事は、ヴィヴィにとって意外なものだった。
(……女の、子……?)
兄の子供ということは、将来は篠宮家を継ぐ可能性が一番高い者。
てっきり彼女も、男児を望んでいると思っていたのに。
ヴィヴィと視線が合い、にっこり微笑んだ瞳子は、
まだ少しも目立たない腹を、銀糸の帯の上から優しく擦る。
そして、その隣。
婚約者の隣に仲睦まじく腰掛けた匠海も、自分の赤子がいるそこを愛おしそうに見つめていて。
「―――っ」
全身が大きく震え、総毛立つ。
目の前にいるのは、どこからどう見ても我が子の誕生を待ち望む、幸福そうな婚約者同士なのに。
兄のその瞳の行方に、ヴィヴィの中に過去の記憶がよぎる。
『血の繋がった実の妹との、禁断のセックス――。
ごく限られた、選ばれた人間にしか味わえない、
究極の “蜜の味” だ。
いくら金を積んだとしても、どれだけ努力したとしても、
誰もが手に入れられる訳じゃない。
それを俺達は互いの利害が一致して、好きなだけ貪れる。
これが興奮しないでいられるか――?』
『鞭』を与えられていた時、匠海から投げ付けられた心無い言葉。
その後、両想いとなった時、
「全部嘘で、ヴィクトリアを試しただけだ」と訂正されたが。
しかし、あの時。
英国のホテルで、兄はこうも言っていなかったか――?
『近親相姦は “血が濃いほど好い” らしいからなあ?』
ヴィヴィの痩せ細った身体を、誤魔化し切れないほどの大きな震えが襲う。
(まさ、か……
まさか、そんな……っ)