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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章
自分の思い至った罪咎。
それはもう、口にするのもおぞまし過ぎて――。
問い詰める瞳で兄を追求すれば、
いつの間にか自分だけを真っ直ぐ見詰めていたその人は、ふっと嗤う。
「俺は、男がいいな。元気過ぎるくらい、賑やかな男の子がいいよ」
まるで「お前の下らない思考なんて、全てお見通しだ」と言わんばかりの様子に、
ヴィヴィは怒りを覚えるよりも先に、心底 安堵を覚えていた。
「そう? 女の子はいいわ~、ヴィヴィちゃんを見ていてもそう思う。やっぱり女の子は、大きくなっても両親とも沢山喋ってくれるし、可愛らしいもの」
瞳子の能天気にも聞こえる声に隠れ、ヴィヴィは薄い唇から詰めていた息を吐き出した。
(そんな訳、無いでしょ……。何、取り越し苦労、して……)
「ああ、そう言えば! ヴィヴィはね、本当に困った子だったのよ?」
母が何かを思い出したように、両手をポンと叩く。
「困った子、ですか?」
「ええ、私達は双子の性別を早く知りたくて、エコーで確認して貰ったんだけど。ヴィヴィったら検査の度に、股に手を挟んでいたり、閉じていたり、こっちにお尻しか向けてくれなかったりで、ねえ? グレコリー?」
「そうだったねえ。クリスはすぐに判ったんだけど、ヴィヴィは可愛いお尻ばっかり向けてたねえ?」
自分でも初耳だった両親の回想に、
「そういえば、俺、マムから「男の双子が生まれるわよ~」って言われた覚えある」
匠海も面白そうに話を膨らます。
「そうだったわね! 本当に生まれてくれるまで、ヴィヴィは判らなかったのよね~。ふふ、誕生の時から周りを驚かす子だったのねえ」
「困った子」と言わんばかりに、笑いながら睨んでくる母。
「弟と妹が一気に出来て、匠海は凄く喜んでいたね?」
「ああ、本当に。毎日が賑やかで楽しくなった」
父と匠海の会話は、その後話が逸れて行き。
「………………」
ヴィヴィは手にしたまま、口も付けていなかった茶器を慎重に取り上げ、
温くなったそれを口に含む。