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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          



 ジゼルに「貴族」だとも「婚約者がいる」とも名乗らなかった、自分本位なアルブレヒトと同じ。



 そこに愛はない。

 ただの執着。

 将来に渡って、一緒に幸せを築こうだなんて、

 相手を幸福で包み込みたいだなんて、

 一つも思ってはいない。



 ましてや “家族” になろうだなんて――。



 きちんと縛った紐に、レギンスを被せ。

 観客席から立ち上がったヴィヴィは、リンクへと降り立つ。

 エッジカバーをフェンス上に置き、駆け出したその小さな顔には、強い決意の表情が浮かんでいた。








 夜のレッスンを終え、ゆっくりと湯を使い。

 就寝支度を整えたヴィヴィの前に供されるのは、朝比奈が用意してくれたハーブティー。

 以前は自分の為に自分で淹れ、その贅沢な時間を楽しみ癒されていたのだが。

 今はその余裕すら無く、自分の為にハーブ検定1級を取得してくれた執事に、全てを任せ切っていた。

「今日は、どんなブレンド?」

 透明なポットは鮮やかなピンク色。

 ハイビスカスが入っているのは判るが、それ以外はぴんと来ず、傍に控える朝比奈を見上げる。

「ハイビスカス、ローズヒップ、ラズベリーリーフ、ローズマリー、アニス、リコリスですね」

 抽出されたそれをカップに注ぎ、そして加える様に促されたのは、ユーカリから採れた蜂蜜。

 点滴に使われるブドウ糖と、脂肪となりにくい果糖とで構成される蜂蜜。

 身体疲労で生じる乳酸は、ハイビスカス等に含まれるクエン酸により、スムーズな分解を促進される。

「美味しい……、ほっとする……」

 酸味と甘みの絶妙なバランスに、自然と唇から洩れたそれ。

「良かったです」

「いつも、ありがとう。朝比奈」

 自分の身体と心を労わってくれるハーブティーに、ヴィヴィは気持ちを込めて感謝を述べる。

 銀縁眼鏡の奥の瞳が柔らかく細められ。

 夕刻、あんな醜態を見られたのに、何一つ態度を変える事無く接してくれる執事。

 彼のその優しい瞳には、自分は一体どのように映っているのだろうか――?


 



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