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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 少し体重を掛けた掌に、ごくりと生唾を飲む感触が伝わる。

「逝く、から……。ヴィヴィ、も……、すぐ、後、追うから……」

「………………」

 細く掠れた声で呟くヴィヴィを、匠海は大きめの唇を開けて見上げていた。

「だから、お、お願い……っ ヴィヴィと、ヴィヴィと一緒に、死のう……?」

(お願い、暴れないで……)

 更に掌に体重を掛ければ、少し苦しそうに兄の眉が歪む。 

 睡眠時を襲う無理心中を強要しながらも、ヴィヴィは何故か匠海の返事を求めていて。

 全ての体重を掛けるには至らず、必死の形相で上から兄を睨み下ろしていた。

 軽く握られていた自分の手首から、大きな掌が離れ、

 ぽすんと響いたのは、黒いシーツの上に降ろされた両腕の音。

「…………いいよ」

 その返事は、音として鼓膜を震わせたのか。

 それとも掌に如実に感じる咽喉仏の動きから、間接的に伝わったのか。

「……――っ」

 聞き間違いかと目を見開くヴィヴィに、匠海は真っ直ぐ見上げながら、

 再度呟く。

 「いいよ」――と。

 予想の範囲外の返答に、ヴィヴィの両手の力が緩む。

「……俺の首を絞めた後、どうやって、逝くつもり……?」

 静かな声音で問うてくる兄に、

「……そこ、で、首を……」

 ヴィヴィがそう呟いて視線を送ったのは、寝室の扉。

 そして、自らの首に巻き付けた、1本のネクタイ。

 ドアノブにネクタイを巻き付け、そこで首吊りをするつもりだった。

 それで過不足なく死ねることは、知識として知っていた。

「駄目だ」

「……え……?」

「遠いよ。もっと俺の傍で逝って? そうだな、これがいい……」

 匠海が視線で指示したのは、ベッドヘッドの支柱。

 4年前、兄を拘束し自由を奪って犯した時に使ったそれ。 

「ここに掛けて、俺の傍で逝って?」

「………………」

 妹に殺されかけて、

 なのにこの期に及んで、まだ甘えてくる匠海に、ヴィヴィは呆けた様にその顔を見下ろすだけで。

「いいね? ヴィクトリア」

 強い声と視線で、返事を催促してくる兄。

「…………は、い……」

 殺そうとしているのは自分の筈なのに、

 兄にそう促され、何故か素直に頷いてしまっていた。

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