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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

「お前は本当に “良い子” だね、ヴィクトリア」

 そう囁く声は甘く、

 ふわりと微笑む端正な顔に宿るのは「心底愛おしくてならない」と愛情を滲ませるそれ。

「 “心中を迫る独り善がりな自分” を演じれば、今度こそ俺に愛想を尽かされる――そう思ったんだろうが、そうはいかないよ」

「………………」

 握られていた手首が、咽喉から徐々に下へと辿らされ、

「お前がどんな過ちを犯そうが、俺は結局お前を許してしまう。ヴィクトリア……、お前が何をしようが、“俺の中のお前” は殺せはしないよ」

「……――っ」

 確信を突く兄の言葉に、ヴィヴィの細い喉の奥「ひっ」と微かな悲鳴が上がる。

「それどころか、そんなにも俺を欲してくれていると感激して、ますますヴィクトリアの虜になってしまったよ」

 逞しい胸筋の下。

 押し付けられた掌に伝うのは、常よりも高鳴る心臓の鼓動。

「…………やめ、て」

 恐怖に怯え切った妹の懇願に、匠海は呆気無く手首の拘束を解く。

 しかし、

「ずっと触れたかった……。ヴィクトリア」

 馬乗りになった白い両太ももを、大きな掌が辿り始める。

「い……、いや……っ!!」

 しっとりした掌の感触に、ぞわりと背筋が凍り付き、

 咄嗟に飛び退こうとしたヴィヴィを、匠海は簡単に捉え、黒いシーツの上に押し倒した。

 背中と頭に受ける衝撃に、一瞬 強く目蓋を閉じたヴィヴィ。

 しかしすぐに目を見開き、両手首を拘束してくる兄を睨み上げる。

「可愛らしいね、震えている。ああ、ヴィクトリアの香りだ」

「………………っ」

 すぐ目の前にあった灰色の瞳が徐々に近付いて来たかと思うと、首筋に顔を埋められて。

 そこで己の香りを確かめてくる兄に、ヴィヴィは渾身の力を込めて逃げようとするが。

 本気の男の力に、伸し掛かられた下半身さえ動かす事はままならず。

「ずっと夢見ていたよ、ヴィクトリア。お前と愛し合うことを」

「……なに、言って……。―――っ!?」

 兄の戯言に思わず突っ込んだヴィヴィは、けれどすぐに躰を強張らせる。

 腰が。

 伸し掛かってくる腰の中心が、ぐぐっと強張り。

 久しぶりに躰を重ねて感じた、匠海の昂ぶりの感触。

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