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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

「お腹空いてない~……、動いてないんだもん……」

「ほほう。では、砂浜をお散歩すれば、ディナーを食べられますね?」

 何故か3月末のクソ寒い海岸線を、1時間近く散歩する羽目になり。

 その後はもちろん、愛情たっぷりカロリーたっぷりの、朝比奈お手製料理を平らげさせられた。

「ぅぷ……、食べ過ぎた……」

 ポッコリ膨らんだワンピの腹を擦る主に、執事はしてやったりとほくそ笑み。

 そのままリビングのソファーに突っ伏したヴィヴィは、いつの間にやら眠ってしまっていた。






 目が覚めると、もう22時を回っていて。

「ささ、お風呂へどうぞ。いいお湯ですよ~」

 なんでか、篠宮邸にいる時より適当な言葉遣いの執事に、風呂へ追い立てられ。

 その湯船に浮かぶ巾着から薫る瑞々しいハーブの薫りに、心の中で唸ってしまう。

(おぬし、やるな……?)

 もう消化されて凹んだ腹を、湯の中で撫でる。

 しかしその手は、ぴくりと震えて止まった。

 指の先、触れる腰に、

 昨夜の兄の硬い感触が、ありありと思い出されて。

「………………っ」



『今すぐは無理でも、お前は絶対に俺の元へと戻って来る。

 お前は俺がいないと駄目だから――。

 俺がいないと生きていけない――そういう子に仕立て上げたのだからね』



 それはもう、呪縛以外の何物でもない。

 切っても切れない、血の繋がりを持った兄妹。

 そうして、匠海はヴィヴィにありえない幻想を重ね、執着し続けていくのか。 

 ぶるりと大きく戦慄く白い肢体。

 全てを取り払って、

 脱ぎ去って、

 投げ捨てて、

 振り出しに戻りたい。

 人生自体をやり直してしまいたいとまで、切に願ってしまう。
 


 そんな事、もう出来る筈などないのに――。




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