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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 長い入浴を終えたヴィヴィに、執事は甲斐甲斐しくハーブティーを淹れてくれる。

 すぐそこの庭にフレッシュハーブがある状況は、ハーブ検定1級の朝比奈には嬉しいのだろう。

「一緒に、飲もう?」

「ふふ、周りの者には、秘密ですよ?」

 主の可愛らしい誘いに、唇の前に人差し指をかざして見せた朝比奈は、請われるままソファーに腰を下ろす。

 口を付けたそれも申し分無く美味しく「何が入っているの?」と尋ねれば、目の前の執事は楽しそうに話してくれる。

 その様子に沈んでいた気持ちが少し救われて。

 綺麗に飲み干したヴィヴィに、

「さあ、お嬢様。もうお休みになりましょうか」

 まだ24時にもなっていないのに、就寝を促す執事に、

 バスローブ姿のヴィヴィは「え~~」と薄い唇を尖らして見せる。

「あれ、そう言えば朝比奈。着替え、ないね?」

 自分が急かして出立したせいで(1人で出掛けるつもりだったから)彼の着替えが無い事に、ヴィヴィは今更ながら気付く。

「ええ。大丈夫ですよ」

「あ、今着てるの洗濯すればいいんじゃない? バスローブなら何着もあるし」

 乾燥機機能のある洗濯機だから、放り込んでおけば明日の朝には乾いているのではないだろうか。

 実際、匠海も初めて来たとき、そうしていたし。

「そうですね。ではそうします」

「もうお風呂入って、寝ていいよ。上にお部屋いっぱいあるし。ヴィヴィ、さっき寝ちゃったから、全然眠くないもの」

「いえ、一晩中、起きております」

 そう断りながら立ち上がった朝比奈は、目の前の茶器を片し始める。

「……別に、死なないよ……?」

 黒スーツの背中に、そう呟けば。

「それでも、心配なのです」

 一瞬だけ手を止めた執事は、そのままリビングからキッチンへとティーセットを運んで行く。

「ふうん。じゃあ、一緒にリビングで寝ようか?」

「宜しいのですか?」

 主の意外な譲歩に、執事がほっとした表情を浮かべる。

 夜を傍で過ごさないと不安なくらい、今の自分は酷い状態に映っているのだろうか。

「うん。たぶん寝れないし……。ソファーでいいや」

 大きなソファーの上をポンポンと撫でるヴィヴィ。

 その目の前にも3人掛けのソファーがあるから、そちらを彼が使えばいいだろう。

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