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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

「ヴィヴィを慰めて」

「はい?」

「ヴィヴィ、最近してないから、溜まってるの」

「何がですか?」

 ぱちぱちと瞳を瞬く執事に、ヴィヴィはそれでは通じないのかと直球で迫る。

「ん~と。性欲……? 溜まってるの」

「は、はあ……。……――っ!? お、お嬢様っ!?」

 目の前に立つ朝比奈が、まさに鳩が豆鉄砲を食らった表情を浮かべている。

 確かに、どこからどう見ても大学生に見えない容姿のヴィヴィが「性欲、溜まってる」等と口にすれば、腰を抜かしそうになるのも当たり前で。

「なあに?」

「御冗談が過ぎますよ」

 窘める口調の執事に、ヴィヴィは不思議そうに首を傾ける。

「冗談じゃないけど?」

「え……?」

「19歳の女子大生。抱く機会なんてあまりないでしょう?」

「………………」

 膝から下、白いバスローブから剥き出しの華奢な脚が、まるで見せつける様に組まれる。

「ヴィヴィ、一応大学に入ってから30人くらいには告られたの。それって男から見てそういう対象として見れるってことだよね?」

「お嬢様。私には無理です」

 拒絶の言葉を、躊躇いも無く吐く朝比奈。

「どうして?」

「私はお嬢様のことを、娘や孫のようにお慕いしております。性の対象として見た事など一度もありません」

 4年前、同じ様に自分を拒絶した匠海。

 けれど躰を繋げた後は、そうは言わなくなった。

 それどころか、あんなにも執着し、この躰を今も欲して来るではないか。

 「慰めて」と言っているのに自分に手を出して来ない執事に、ヴィヴィは何故かイライラしてきて。

「ふうん……。じゃあ、見て」

 そう言いながら、ソファーから腰を上げたヴィヴィ。

 太いバスローブの紐を解き、襟首を掴んで躊躇無く開けば、

「……え……? お嬢様……、何をっ!?」

 白く厚めのそれが、ばさりと音を立てて床へと落ちる。

 そしてそこに佇むヴィヴィは、何も身に着けていない、生まれたままの姿を晒していた。

 明るいリビングの光を浴る、風呂で火照った躰は、

 関節や輪郭を、ほんのり薄紅色に染め上げていて。
 
 そして透き通るほど肌理細やかな白い肌は、ここ最近で激痩せしたとはいえ、

 何とか愛らしい少女の “てい” を成していた。

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