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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 けれど、

 本当はそんな事、何一つ求められていなかった。
 
 匠海はただ、

 自分の掌の上で右往左往をするヴィヴィを、見下ろしていたかった。

 ただ、それだけの愛玩物だった。

「………………」

 柵に置いた指先が冷えて、痺れ始めていた。

 サンダルを履いただけの足先も同様で。

 海に浸かればもっと冷たいのだろうか? 

 ――そう、妙な好奇心が湧いた。
 
 ここに来ると必ずと言っていいほど、兄と砂浜を散歩したっけ。

 自然と足が向き、砂浜へと続く坂道を辿っていた。

 沈み込む砂の独特の感覚に足を取られながらも、波打ち際まで寄ってみる。



『葉山……、また、行こうね?』

『勿論。冬の海っていうのも、またいいぞ?』

『毎日、ヴィヴィとちゅー……、してくれる……?』

『ふ……。お前の可愛い唇が “たらこ” になるくらい、してやる』

『薔薇、一緒に見ようね?』

『ああ。5月になったらな』

『ヴィクトリア? 俺に一杯、我が儘を言って?』

『俺だけに沢山、甘えてくれ』

『この2年半、お前に寂しくて辛い思いを沢山させた――。償いたいんだ』

『だって、お前ってば、本当に可愛いんだもの。やっと両思いになれたんだ。もう、でろんでろんに可愛がって甘やかしたい』

『……ヴィヴィ、物凄く “駄目人間” になる気が、するんですけど……』

『なればいいよ。俺が責任もって、ずっと面倒見てやるから。俺にだけ “駄目人間” になって?』

『ヴィクトリアに “俺がいないと生きられない子” になって欲しい』



『だから安心して、俺の恋人になりなさい』



 気が付けば、いつの間にかサンダルは脱げていて。

 白い指先を薄紫に染め上げながら、波が洗っていた。

 よく「寄せては返す波」と言われるが、それは嘘だと思う。

 だって目の前の海は、水平線の向こうから、ずっとずうっと波が押し寄せるばかりで。

 高くはないけれど低い波が、後から後から続いてくるだけで。

 引いていく様子など、微塵もなくて。

 その “永遠” さえも感じさせるものに心が高鳴り、

 その源であるように見える、水平線へと興味を惹かれる。

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