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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          



 あそこへ行けば、もう自分は戻らなくていいのだろうか。

 あそこへ行けば、もう自分は苦しまなくていいのだろうか。

 あそこへ行けば、匠海は幸せになってくれるのだろうか。



 足先を洗う冷たい海水で、もう指の感覚が無くなっていた。

 そう無くなればいい。

 全て無くなればいい。

 自分の心も、

 自分の身体を構成する要素も、
 
 全て、無くして、殺して、

 この海の中で、散り散りになって、

 そして――



 踝から脛へ、

 脛から膝へ、

 膝から太ももへ、

 太ももから腰へ。

 少しずつ深さを増す度に、身体を襲っていた震えも無くなっていく。

 冷たさなんて感じない。

 神経を侵す痛さなんて感じない。

 頼り無い身体から離れ、浮かぶ白いそれ。

 波に洗われるバスローブに、視線を落としたヴィヴィは、

 砂と小さな海藻らしきものを纏ったポケットに手をやる。

 そして、

 中の物を探ると、それを勢い良く振り被って空へ向かって放る。

 美しい放物線を描き、金色に鈍く輝くそれは、

 呆気無いほど小さな水音を立て、海面へと吸い込まれた。

 その瞬間、脳裏を過ったのは、

 純粋で穢れを知らなかった、あの日の自分。



『ヴィヴィ、毎日着けるね。学校にも、リンクにも、試合にも!』



 それまで表情というものが無かった、小さな顔がくしゃりと歪み、

 薄い唇から洩れたのは、

「……嘘、吐き……」

 掠れた、あまりにも弱々しい声。

「いつ、も…………」

 波音にも掻き消されるその細い声は、

 やがて、勢いを持ったそれに変わる。

「~~~っ!!! いっっっつも、そうっ 

 全部自分で、何でもかんでも決めちゃうのっ!

 全部、ぜんぶ説明なしに始めてっ 終わってから事後報告……。

 ヴィヴィのこと、いったい、なんだと思ってるのっ!?」

 いつの間にか身体の脇で固く結んでいた握り拳を、苛立ちを込めて振り被り、海面へと叩きつける。

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