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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

「ずっと……っ ずっと一緒に居ようって誓ったのに、

 飽きたら説明もなしにポイするのっ!?

 強引で、自分勝手で、強情で……っ

 物っっっ凄い、我が儘――っ!!」

 そこまで一息に叫ぶと、いつの間にか はぁはぁと息が切れていて。

 その格好悪さにさえ腹が立ち、

 ヴィヴィは水平線へと向かって、声の限りに叫ぶ。

「アンタなんか、こっちから願い下げだっつ~のっ

 お兄ちゃんのバッカヤロ~~~っっっ!!!」

 誰にも、本人にも吐き出せなかった、心からの叫び。

 それを身体全体を使って叫べば、

 全てではないが、少しだけ怒りが昇華出来たような気がした。

 頬を伝う涙の冷たさに気付き、

 濡れていなかったバスローブの肩口で、乱暴に拭う。

 荒く乱れる息を整えていると……襲ってきた。

 猛烈な冷たさと寒さと、悪寒――が。

 冷静になってみれば、外気温はまだ10℃以下で。

 海水なんて阿呆みたいに冷たい。

(な、なにやってんだ、ヴィヴィ……)

 まるで氷水に感じるそこから、とっとと引き上げようと振り返れば、

 視線の先、波打ち際でこちらを見つめているその人の姿を認める。

「………………」

 いつから見られていたんだろう。

 一瞬そんな事が頭を過ったが、

 もう昨日から格好悪いところばかり見られているので、「もう、いいや」という気にもなり。

 ばしゃばしゃと豪快な水音を立てながら、岸へと戻って行く。

 そして、自分を待つその人も白のバスローブ姿のままで、

 ちょっと無精髭なんかも生えていて、極め付けには寝癖なんかも付いていて。
 
 なんだか少しカッコ悪かったので、内心 苦笑してしまった。

 いや、解っている。

 起きたら目の前で寝ていた筈の主が、忽然と消えていたのだ。

 きっとその辺を必死に探し、海に入っている馬鹿主を見つけ、一目散に駆け下りて来たのだろう。

 ありがたいことだ。

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