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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章
「寒い! 冷たい! し、死ぬぅ……っ(°ཀ°;)」
胸から下がずぶ濡れのヴィヴィが、震えながらそう叫べば、
「当たり前でしょうがっ!」
同じ声量でそう喚かれる。
「お風呂っ! おふろおふろおふろ~っ!!!」
(寒いっ し、死ぬっ まだ、全然死にたくなんてないのにぃ~~っ!!)
その場で地団太を踏んで、我が儘を言う主に、
「そんな連呼しなくても……。はいはい、すぐにお風呂で暖まりましょうね」
呆れた表情を浮かべた執事。
それでも最後には苦笑して、お馬鹿な主を別荘へと引っ張って戻ったのだった。
風呂でぬくぬくし、生き返ったヴィヴィは、
持参したワンピに身を包む。
身支度を整えたその顔には、もう迷いは無く、
大きく深呼吸して、バスルームからリビングへと戻る。
「お嬢様」
キッチンに立つ朝比奈は、いつの間に着替えたのか、
いつも通りの黒スーツを纏い、身嗜みもきちんと整えられていた。
「よ~し、帰ろっか~」
そう間延びした声で帰宅を宣言するヴィヴィに、朝比奈がにっこり微笑む。
「はい。でもその前に」
「?」
「愛情たっぷりカロリーたっぷり、の朝食を召し上がって頂きます。まったくお嬢様は、そんなガリッガリになられて! この朝比奈、腕によりを掛けて、お嬢様を子豚にして差し上げますよ」
朝比奈のその言葉に、昨日のボリューミーなディナーを思い出したヴィヴィは、
「え゛~~っ」
と不満の声を上げる。
朝比奈の手料理は美味しい。
美味しいけれど、如何せん量が多いのだ。
「大丈夫ですよ。きっとお嬢様ならぽっちゃりされても、物凄く可愛いこと間違いなしです」
「は、はは……」
うっとりとそんな事をほざいてくる執事バカに、ヴィヴィは乾いた笑いを零しながら、心の中で突っ込んでおいた。
(だから、太ったらジャンプ、飛べなくなるんだってば……)
食事を終え、準備を整え、
主従を乗せた白のレンジローバーは、昨日と同じルートを辿り、元来た道を戻っていた。
その車内、
助手席のヴィヴィはキャメル色のオックスフォード・レザーのシートに身を預け、ぼんやりと車窓を眺めていた。