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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 昨夜、朝比奈に言われた言葉が、自分に気付かせてくれた事があった。



『……お嬢様は、どうお思いなのです?』

『その行為に心は無かった――そうお思いですか?』



 白く細い掌が、シートベルトの上から胸を押さえる。

 自分が愛した匠海はいなくなった。

 けれど、
 
 匠海を愛していた自分は、やはりまだ “ここ” にいる。

 14歳からずっと育んできた恋心を抱きながら、

 今も胸の奥で両膝を抱えうずくまっている。
 
 戻るべき橋を失い、
 
 迷路の出口を見失い、

 暗闇を彷徨いながら、まだ “ここ” にいるのだ
 
 だから、殺さないといけない。

 本来なら15歳のあの時、

 殺さなければならなかった、この禁忌の思い。

 自分の決着は誰の手でもなく、自分の手で決着を着けなければならない。

 そう。
 
 自分は、

 自分自身の手で

 今度こそ、



 “匠海に恋するヴィヴィ” を、殺さないといけないのだ――。
 






 とは言っても、

「はぁ……、現実の世界に戻るのが、嫌……」

 帰り着いた篠宮邸の車寄せ。

 重い足取りで助手席から降りるヴィヴィを、ドアを開けてくれる朝比奈が、包み込む微笑みで慰めてくれる。

「私がおります。ずっとお傍におりますから、辛くなったらいつでも胸に飛び込んできてください」

「……ん……、分かった……。朝比奈?」

 顎に梅干を作ったしょげた表情の主を、執事が微かに首を傾げ、見下ろしてくる。

「何でしょう?」

 ヴィヴィは朝比奈の右肩に両手を乗せると、うんと背伸びをし、

「大好きっ」

 そう囁きながら、引き締まった頬に唇を押し付ける。

 思わず「チュっ」と可愛らしい音を立ててしまい、両手を離して再度執事を見上げれば、

「……――っ」

 驚きで絶句して固まっている朝比奈がいた。

「うふふ、ありがとね~♡」

 無邪気にそうお礼を言っていると、

「あ~さ~ひ~な~……っ!!」

 玄関ホールの中から、地獄からの呻きの如き、低い声が響いてくる。

「く、クリス様……っ ち、違います、これは……っ!」

 隣であたふたし始める朝比奈を放置し、

「あ、クリス~、ただいま~」

 能天気に挨拶しながら、クリスの元へと駆けて行く。

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