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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 今シーズン最後の試合、国別対抗戦を1週間後に控えた頃。

 クリスは五輪を終えてから、公官庁やメディアに引っ張りだこで。

 五輪・金、世界選手権・金を祝し、他のメダリスト達と銀座のパレードまで催されていた。

 もちろん団体戦2位の立役者――ヴィヴィにも出演依頼が殺到していたが、本人の意思で全て断っていた。

 そして3月29日(水)、ヴィヴィはというと匠海の書斎にいた。

 平日の夕方、部屋の主はおらず。

 デスクの目の前、佇むその視線の先にあるのは、作り付けの書棚に飾られた、ガラスのみで出来た砂時計。

「……どうして、黒にしたんだろう……」

 美しいくびれを描くその底に、沈黙する黒い砂。

 他にも砂の色はあっただろうに。

 どうして、暗いイメージの先行する黒を選んだのだろう。



 自分と過ごす時間は黒いから?

 こんな穢れた関係は黒いから?

 ヴィヴィなんか、最初っから愛していなかったから?



「………………」

 どうしても引き吊り込まれる、失恋の痛手という、出口の見えない闇。

 きっとそれは、時間くらいしか解決する手立ては無くて。

 ふるふると金の頭を振り、意識を切り替えるように努める。

 そして申し訳無いとは思いながらも、デスクの一番大きな引き出しを空ける。

 きちんと整理整頓されたそこに、細い指先が一つひとつを並べていく。

 ダイヤのピアス。

 2本の華奢なカチューシャ。

 サングラス。

 時計。

 全て、匠海からプレゼントされたもの。

 他にも貰ったものは数え切れないくらいあるが、その中でも高価なものは返すことにしたのだ。

 プレゼントされた沢山の洋服は、もう朝比奈に処分を頼んである。

 そして高価では無いけれど、どうしても捨てられなかった、英国土産のバグパイプを抱えたテディベア。

 額にちゅっとキスを落としてお別れすると、引出しに収め。

 それらに纏わる素晴らしい思い出に蓋をしながら、デスクの引き出しを元へと戻す。

 もしかしたら、気付かないかも知れない。

 兄自らの手で、新居への引っ越し準備をしないかも知れない。

 だとすれば執事の五十嵐が、しかるべき処分をしてくれるだろう。

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