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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章
SP7つの要素を、レベルの取り零し無く滑り終えたヴィヴィ。
小さな顔に笑顔を張り付けて四方に礼を贈り。
キス・アンド・クライで、有頂天に出迎えてくれるチームメイトに、にへらと笑って見せる。
「良かったよ~! すっごく可愛かった」
「ルッツからのコンビネーション、鳥肌モンだったっ」
みんなが口々に褒めてくれる中、母だけは違っていた。
表面上は賑やかなチームの中、笑顔を湛えてはいたが。
『ヴィヴィは一体、何を表現したくてこのプロを滑るの――?』
そう言いたげなコーチの想いが、ひしひしと伝わって来て。
SP1位に立ちながらも、ヴィヴィの心は晴れず。
(五輪・個人戦の……あのSP以上の滑りは、もうこのプロでは無理……)
高い得点を皆と喜び、観客席に笑顔を振り撒きながらも、
バックヤードへ戻る最中、この『girls』の限界を感じていた。
4月6日(木)、大会2日目。
16:00から始まった試合は、各国の選手が演技はさる事ながら、気合の入った応援で盛り上げ。
ペア SP、アイス・ダンス FD、男子 FPの種目が行われた。
女子の滑走は無かった為、ヴィヴィは本郷と一緒に応援に徹し。
男子のキス・アンド・クライでは、渋谷兄妹と(バックヤードにてYouTubeで研究した)バカ殿の「うれしいなダンス」を披露し、会場の笑いを誘っていた。
「現役最後の試合が、こんな楽しい試合って、サイコー!」
本郷がそう言ってくれて、ヴィヴィはちょっと救われた気がした。
4月7日(金)、大会3日目。
この日は15:15から始まったペア FDと、16:50からの女子 FPが行われる。
男子はクリスがSP・FP1位、
ペアはSP2位、FP3位、
アイス・ダンスはSD2位、FD2位、
残り女子 FPを残し、日本チームは暫定1位という位置に付けていた。
もちろん2位は、五輪・団体戦1位のアメリカ。
そしてアメリカチームの女子選手には、
ミュンヘン五輪・金の、ヴィヴィアン・リー(19)を擁していた。