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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 実はヴィヴィは大会初日に、初めてヴィヴィアンの演技を生で見た。

 19歳になった先シーズンに急成長した彼女だが、ジュニアの試合では上位争いに食い込む事は無く。

 ヴィヴィは数度 顔を合わせた事があるくらいで、特に交流は無かった。

 そんなヴィヴィアンの特徴は、ジャンプの安定性。

 もちろん ルッツ+トウループという、最高難度のコンビネーションを飛んでくるところも強みだが。

 各ジャンプの前後の流れが止まらず、踏切も確実。

 そして転倒等で大きく崩れず、演技を上手く纏めてくる――そこが彼女の強みだと思った。

 巷では、 

 五輪・団体戦  → 勝者:ヴィヴィ   敗者:ヴィヴィアン

 五輪・個人戦  → 勝者:ヴィヴィアン 敗者:ヴィヴィ

 世界フィギュア → 勝者:ヴィヴィ   敗者:ヴィヴィアン

と、ヴィヴィが2勝1敗と見られ。

 今シーズン最後の試合――「国別対抗戦で一騎打ち!」と騒がれているのは、嫌でも耳に入ってきていた。
 
 そして今、最終滑走者であるヴィヴィの目の前。

 ヴィヴィアン・リーは会場を味方に付け、大満足の内にFPを滑り終えていた。

 それは五輪女王の名に恥じぬ、堂々とした滑り。

 日本人の観客に埋め尽くされた客席が、惜しみも無くスタンディング・オベーションを贈るほどに。

 中国系アメリカ人である彼女は、黒髪で顔付きもアジア人。

 日本の血が1/4しか入っていない金髪灰眼のヴィヴィよりも、余程 日本人に見えるかもしれない。

 そんなどうでもいい事を思いながら、ヴィヴィはリンクへと入っていく。

 得点を待つ間、確認事項を一つずつ潰し。

 結局 体重が戻らず、寒さに弱くなった身体から熱が奪われない様、ぎりぎりまで日本代表ジャージを纏っていた。

「ヴィヴィアン・リーさんの得点 150.67。総合得点 225.60。現在の順位は第1位です」

 読み上げられた得点に、場内から驚きの声が上がる。

 五輪のFPを2.01上回り、今季最後の試合でシーズンベストを更新したヴィヴィアンに、盛大な拍手が贈られていた。

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