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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

「ヴィヴィ。悔いを残さないよう、滑りなさい」

 ジュリアンのその言葉に、ヴィヴィはしっかり頷く。

「ヴィヴィ。どんなヴィヴィでも、僕の可愛い妹だよ。愛してる……」 

 クリスの心の籠った囁きに、ヴィヴィはその暖かく大きな手を握る。

 どうやら日本チームが掛け出した「ヴィーヴィっ! ヴィーヴィっ!」という声を受け、18,000人の場内が一気にヴィヴィの名を連呼し始める。

「12番 篠宮ヴィクトリアさん 日本。On the ice, No.12 The representative of Japan,Victoria Shinomiya」 

 もう一度コーチとクリスに視線を合わせて頷き、肩甲骨が如実に浮き出た背中を向ける。

 ここからは、独りの戦い。

 どれだけの声援の後押しがあろうが、自分自身が整っていないと何ともならない。

 ここ最近、演技前は1分間の猶予時間を、ぎりぎりめい一杯まで使うことが多かったヴィヴィが、

 湧く会場の中、硬い表情のまますぐにスタート位置へと跪く。
 
 その身に纏うのは、純白の衣装。

 『ジゼル』とは、主人公が死装束で踊る、唯一のバレエ作品。


 もしかしたら、この曲を選んだ時点で、

 自分の運命は決まっていたのかもしれない。


 一瞬静まり返ったリンク。

 そこに流れるのは、フルートとクラリネットの緩やかな旋律。
 
 氷上に跪いたヴィヴィが、摘まんだマーガレットの花弁を1枚千切る仕草をする。

 その途端、ぐっと胸に押し寄せるものがあり。

 何とか瞬きを繰り返して堪えながら、1枚、2枚と引き千切り、金の頭を振りながら立ち上がる。

 美しく山なりのオーケストラの音色の中。

 助走に乗るそのスピードは常と同じ速度で、前向きに踏切った華奢過ぎる身体。

 スムーズな3回転アクセルの着氷後も、自分を裏切ったアルブレヒトに縋り付こうと両腕を伸ばし。

 やがてそれは現実を知り、絶望の表情と共に降ろされていく。

 弦楽器が奏でる、焦燥感を煽る小刻みな低い響き。

 3回転フリップ+3回転トウループ。

 アクセルからのコンビネーションを回避したのは、コーチと相談した結果。
 
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