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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第32章
「………………」
ヴィヴィは首から下げたメダルをちらと見降ろす。先程までは皆で手にした銅メダルを誇りに思っていたのに、今のヴィヴィにはなんだか「取るに足らない物」に成り下がった様な気がした。
「ヴィヴィ!」
明るい声に呼ばれふと視線を上げると、棚橋成美が自分を見つめてにかっと笑っていた。まるで弾けるような、全身で喜びを表しているような嬉しそうで誇らしそうな表情。ヴィヴィの胸がぐっと詰まる。
「………………っ」
(……ヴィヴィの、馬鹿……これは、このメダルは皆で協力して勝ち取った、かけがえのない物なのに――!!)
ヴィヴィは自分の下らない考えを振り切るようにぷるぷると首を振ると、満面の笑みを浮かべて棚橋やマリア渋谷が待ってくれているところまで両手を広げて滑って行ったのだった。
その後皆で写真を撮りまくり、帰り支度をする為に更衣室へと戻った。FPが終わってすぐの表彰式だったヴィヴィは、纏っていた衣装を破らないように注意深く脱いで畳むと、ロッカーに置いてあった小さなトランクにしまう。日本代表のジャージに袖を通して身の回りの整理をし終わった時、ジャージのポケットに入ったままだったスマートフォンがブルブルと震えた。
スマートフォンを取出しロックを解除すると、信じられないほどのメールが届いていた。その中に親友のカレンの名前を見つけ、ヴィヴィの瞳が細まる。スクロールしてメールの相手を見ていると、また新しくメールが届いた。
「………………っ」
差出人は匠海だった。
ヴィヴィは咄嗟に息を飲み込むと、何故か震え始めた指でメールを開く。短い内容のメールにさっと目を通すと、ヴィヴィは声にならない悲鳴を上げた。途端に鼓動が跳ね上がり、頬が薔薇色に染まり熱を持つ。
「――――っ!!!」
『団体戦、お疲れ様。
そして銅メダル、おめでとう。
ヴィヴィのこと、本当に誇りに思うよ。
今すぐハグして頭を撫でてやりたい。
帰ったら思いっきり抱きしめさせて?』
灰色の瞳をこれでもかと見開いて、スマートフォンを食い入るように見て何故か地団駄を踏んでいるヴィヴィに、近くで片付けをしていた村下と宮平が不思議そうにヴィヴィを見てくる。
「どした~?」
「なんかあったの~?」