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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 だから、

 泣くのは、もう止めにしないと。

 自分を相手を責めるのは、もう止めにしないと。

 そうしないと、

 兄も自分も、1歩も前へと進めなくなる。

 最後、

 リンク中央に置き去りにしていた白牡丹。

 それを拾い上げた細い腕の中。

 白のベール越しに涙を堪え、その大輪の花の中に顔を埋める。

(今は無理でも……、

 すぐには無理でも……、

 ヴィヴィは自分自身の手で、大輪の花を咲き誇らせる――)

 恩師の奏でる雅な旋律が途切れ、大歓声と拍手が贈られるリンクの中央。

 ヴィヴィはそう、己に誓った。






 4日間に渡る国別対抗戦を終え、やっと今シーズンの全てのスケジュールが終了となった。

 各選手達とお別れし、来シーズンでの健闘を誓い合い。

 日暮れの時間、双子は松濤への道を辿っていた。

 車窓からの眺めを見つめながら、ヴィヴィは薄く長い溜め息を漏らす。

(疲れた……。心底、疲れた……。でも、あと1日、だから……)

 そう自分に言い聞かす。

 けれど、どうしても堪え切れない想いが、胸に押し寄せて来て。

(ああ、もう……駄目だ……っ)

 ぶるぶると大きく頭を振ったヴィヴィは、隣の席のクリスを振り返る。

「ごめん、クリス。ヴィヴィ寄り道したいところがあるの。少しだけ遠回りになってもいい?」

 ベンツに乗り込んでからずっと無言だった妹が、いきなり尋ねてきたその問いに、

「え? あ、うん、いいよ……。もう、帰るだけだし……」

 そう少し面食らった様子のクリス。

「ありがとう。クリス」

 礼を言ったヴィヴィは、運転手に向かって行先を告げ、

 そこでクリスと別れ、行きつけのその店へと吸い込まれるように入って行った。








 翌日、4月9日(日)。

 ついにその日はやって来た。

 早朝からいつも通り、リンクへと向かったヴィヴィとは対照的に、

 シーズンオフへと突入したクリスと母は、屋敷で過ごしていた。
 
 午前中一杯、クタクタになるまでサブコーチにしごいて貰い、

 屋敷に戻って昼食を採り、泥の様に眠った。

 そして、朝比奈の手を借り身支度を終えたヴィヴィは、先に出発したらしい両親とは別に、クリスと一緒に屋敷を出た。

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