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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章
瞳子の華道家としての本領を発揮したボールルームの装飾は、大層見事で。
ホテルカラーの深い青と、背の高いカラーで彩られた上質の空間の中、披露宴は粛々と執り行われていた。
正直、ヴィヴィは各テーブルへの挨拶と、自分のファンだと言ってくれる新婦側の招待客に礼を尽くすのに忙しく。
あまりその内容は覚えていなかった。
全く料理に手を付けず、自分の席にもほとんどいなかった孫娘を、
(後から母に聞かされたところ)両家の祖父母は驚きの目で見ていたそうだ。
「少し前まで、匠海の背中に隠れてる様な、甘えん坊だったのにな……」
「ヴィヴィったら……。いつの間にあんなに大人の振る舞い、出来る様になったのかしら……」
日本人の祖母・菊子が発したその称賛の声は、
果たしてヴィヴィにとって、嬉しいものだったのだろうか。
披露宴が終了し、招待客を見送る時になって、ヴィヴィはようやく瞳子と話す機会を持った。
「ヴィヴィちゃん……。まあ……、誰か分からなかったわ?」
心底驚いた様子の瞳子に、黒い前髪の下、灰色の大きな瞳が細まる。
チャペルにいる時から、意識して視界に入れないようにしていた、兄の新妻。
その人と、
幸せ絶頂のその人と、
直接対面しなければならないのは、新郎の妹なら当たり前のことで。
オフホワイトのウェディングドレスから、零れ落ちそうな豊かな胸。
5ケ月の妊婦でなければ、どれだけ細い腰なのだろうと想像してしまうくらい、メリハリのある大人の女性の身体のライン。
そして、初対面の時は和装であったから気付かなかったが、瞳子は化粧映えする目鼻立ちで。
170cmもあるその長身は、幸福の真っただ中の花嫁というよりは、
映画のフィルムの中で微笑む、ゴージャスな女優のようにも思えた。
(……こういう人が、本当の、お兄ちゃんの好み……)
黒のレースに包まれた薄い胸が、じりりと焦げた気がした。