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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

「ヴィヴィちゃん……。嬉しいよ……、凄く、すごく嬉しいよ」

「そうですか? ヴィヴィも鬼妹になるかもですけど?」

 こてと可愛らしく首を傾げて見せれば、太一が吹き出す。

「ふっ それでもいいよ。可愛い鬼妹が2人に増えて “お兄ちゃん冥利” に尽きるね」

「ふふっ」

 大切な人が笑ってくれるのが嬉しくて、ヴィヴィの顔にも演技ではない自然な微笑みが浮かぶ。

「君は本当に強いね」

 自分を眩しいものを見る様に、瞳を細めて見下ろしてくる太一。

「……全然、そんな事は無いです」

 そう零しながら、ヴィヴィは苦笑する。

 つい先程、兄の新妻に嫉妬した自分。

 そんな自分が強いなんて、ある筈もない。

「そうか。また、うちに遊びにおいで? 円も待ってるよ」

 ぽんと撫でられた黒髪に、ヴィヴィは瞳を細め、

「はい」

 そう素直に頷き、真行寺を見送ったのだった。

 そして、親族一同として招待客のお見送りを済ませ、

 まだ用があるという両親と別れ、両家の祖父母と共に披露宴会場を辞去した。
 

 




 4月10日(月)。

 昨夜、匠海の結婚式へと参列した両家の祖父母は、篠宮邸へ逗留し。

 夜更けまでその相手をしていたヴィヴィは、それから一睡もしなかった。

 明かりを落としたリビングで、愛魚の眠る姿をじいと見つめていたかと思うと、

 その姿は、ウォーキング・クローゼットの中へと吸い込まれて行き。

 10分後に出て来たその手には、小さなスーツケースを携えていた。

 早朝3:30。

 使用人の多い篠宮邸でも、流石に夜勤の執事1人しか起きていない時間。

 足音を殺して階下へと降りたヴィヴィは、迷わず屋敷の奥へ奥へと歩を進める。

 辿り着いた裏口をくぐり、その先の高い塀を抜ければ、

 そこには1台のタクシーが待っていた。
 
 まだ暗闇の中、ハザードランプを焚いた車の脇にで待っていた運転手に、

「お待たせしました」

 そう声を掛ける。

「スーツケース、トランクにお積みしましょうか?」

 運転手の問いに、小さく首を振ったヴィヴィは自分の身体と一緒に、それを後部座席に引き入れた。

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