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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

「ご利用ありがとうございます、篠宮様。出発致します」

 首都高に乗ったタクシーは、時間も早いことからあっという間に目的地である羽田空港へと着いてしまった。

 カードで決済しようと財布を開いた指先が、一瞬 躊躇し。

 札入れから1万円札を抜き取り、精算を済ませた。


 
『1週間、休みを頂けませんか?』

 世界選手権を終えたその日、ヴィヴィはコーチである母にそう願い出ていた。

 娘のその要求にジュリアンは、

『匠海の結婚式が終わった後なら、いいわよ』

 条件付きで了承してくれていた。



 だからこれは、衝動的な家出なんかじゃない。

 さすがのヴィヴィも、もうそこまで子供ではなかった。 

 ただ、幾つかの嘘は吐いたが。

『1週間どうするの?』

 そう尋ねられ、

『カレンと南の島、行くの』

 と言ったのが1つと。

『分かったわ。グレコリーには私から言っておくから、クリスと朝比奈には、ヴィヴィから言っておくのよ?』

 そう言い渡されて頷いたくせに、しなかった。

 何故って?

 ヴィヴィを甘やかす天才の2人に言おうものなら、何だか大変な事になりそう――そんな気がしたからだ。

 最終的に両親の口から聞けば、納得してくれるだろうし。

 出発時間の4時間以上前に到着してしまったヴィヴィは、ビジネス・ファーストクラス専用のラウンジへとチェックインし。

 さすがに眠気を催し、その座り心地の良い深いソファーに埋もれ、寝てしまった。
 
 

 3時間後にラウンジスタッフに起こされたヴィヴィは、寝ぼけまなこで出国審査等を済ませ。

 晴れて機上の人となったのが、8:50。

 目をしぱしぱさせながら、ビジネスクラスのシートから外を眺めていた。

「………………」

(もう、妹としての役割は、果たしたよね……?)

 そう返事の帰って来ない問い掛けをし。

 ヴィヴィの意識はまた、微睡の中へと落ちて行った。






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