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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章
「ちょっとクリス! 一緒の部屋なんて、ヤダからねっ!?」
白・赤・紫と、センス良く配された一人掛けソファー。
その1つに座りこんだクリスの隣、ヴィヴィは声を落としながら食って掛かる。
「なんで……?」
「なんでって……。ひ、1人旅に来たんだから、1人で泊まるに決まってるでしょっ?」
ヴィヴィは正当な主張とばかり、そう続けたが、
「……僕は “カレンと南国旅行” って聞いてたけれど……?」
「………………っ」
自分の吐いた嘘を突き付けられ、ぐっと押し黙るしかなかった。
「1人旅って知ってたら、マムだって、許可しなかったんじゃないかな……?」
続くクリスの静かな声に、
「……ヴィヴィ、もうすぐ、20歳……だもん……」
先程までの勢いが無くなったヴィヴィが、ごにょごにょと口の中で言い募る。
というか、ここ英国では18歳で成人なのだが。
「そういう問題じゃなくて……。ヴィヴィがここのところ、精神的にも肉体的にも不安定なのは、みんな気付いてるって事……」
「………………」
そう核心を突かれると、ヴィヴィは何も言えなくなってしまう。
項垂れて大人しくなった妹の黒髪を、兄がぽんぽんと優しく撫でる。
「まあ、一緒の部屋に泊まっても、僕、ほとんどいないから……」
「……え……?」
小さな疑問の声と共に、ゆっくりと顔を上げたヴィヴィに、瓜二つの双子の兄は軽く眉尻を下げてみせる。
「だから言ったでしょ? 英国に用事があるんだって……。それに一応、リンクにも通うつもりだから……」
「………………」
確かに。
空港でリムジンに積み込んだクリスの荷物は、大きかった。
1週間の旅行の荷物 プラス スケート用品という事は容易に見て取れていた。
一方のヴィヴィは、2泊3日分としか見えないほどの軽装で。
「……いつものリンクなら、オーウェンの屋敷からの方が、近いよ……」
父の生家・オーウェン邸はロンドンの郊外にあり、
渡英の度に双子が世話になっているリンクは、ここ(ロンドン中心地)からだと少し離れていた。
まあ、その主である祖父母は、まだ日本の篠宮邸に滞在しているが。