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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 正論を主張するヴィヴィに、

「ううん……。今回は違うリンクに、お世話になるから……。ここからの方が、近いんだ……」

 クリスがそう答えたところで、ベルボーイが「お部屋の準備が整いました」と迎えに来て。

 あれよあれよという間に、双子はスイートへと案内されてしまった。







 そしてクリスは、本当に宣言通り、部屋を出て行ってしまった。

 荷物も格好もスケートに行くもので。

「ん~……、帰りはきっと深夜になるから、僕に気にせず寝ててね……?」

 その言葉を置き土産に、いなくなった。

「………………」

 ヴィヴィはぽつんと1人、広い部屋に取り残されてしまった。

 否――最初からそのつもりだったのだが。

 クリスの登場が、あまりにも予想外の出来事で。

 そして嵐の様に姿を消したので、何というか呆気に取られてしまったのだ。

 メトロポリタンホテル ロンドン。

 このホテルを選んだ理由は、目の前にハイド・パークが広がっていたからだ。

 ハイド・パークとは、ロンドンに8つ存在する王立公園の1つ。

 総面積は625エーカー(2.5㎢)。

 「東京ドーム何個分?」と聞くのはやめて欲しい。

 とにかく広大な都市公園なのは、世界的に既知のこと。

 大きな白革ソファーに腰を下ろしたヴィヴィは、目の前に広がる緑一色の景色にほっと息を吐く。

 スイート(続き間)のここは、

 キングサイズのダブルベッドの置かれた広大なベッドルーム、 
 
 そこから外に出られるテラス、

 バスルーム、

 ベッドルームと同等の広さの応接間、があるくらい。 

 「未成年の双子には、贅沢過ぎる」と怒られる程のものでは無かった。

 1週間の休暇。

 ヴィヴィが一番したかった事は、日本を離れる事。

 ただ、それだけで。

 逆にそれさえ叶えば、他は何もしたくは無かった。

 観光も、豪華なホテルライフも、もちろんスケートも、

 何も興味を持てなかった。

 ただただ、ぼ~~としたかったのだ。

 その思い通り、ヴィヴィは14時過ぎにチェックインしてからずっと、

 ほへ~~と、公園の緑を見つめていた。

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