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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 日が暮れて見えなくなってもじっと見ていたら、薄い腹が「きゅるる」と鳴いて。

 しょうがないから、ルームサービスを取り。

 そのまま風呂も済まし、時差ボケも相まって眠ってしまったのだった。






 翌朝、レースのカーテン越し、眩しい朝日が差し込む様子に目を覚ませば、

 いつの間に戻ったのか、クリスが隣に眠っていた。

 ベッドサイドの時計を見れば、8時で。

 しばらくしてクリスが珍しく自力で起きたので、ホテルのレストランへと朝食を採りに行く事にした。

「クリス……、大学、は……?」

「いいんだ……」

 ヴィヴィの問いに、クリスは何でも無い事の様に、軽い声を返してくる。

「いいって……? 先週の金曜から、講義、始まってるよ?」

「……ヴィヴィも、でしょ……」

「………………」

 クリスの最もな返しにヴィヴィは黙り込み、とりあえずプチトマトを咀嚼して誤魔化す。

 双子はこの春、晴れて3年生へと進級した。

 東大では、1~2年生は教養学部に席を置き、多角的な視野と知識を養い。

 3年生からは、それぞれの進路へと進む。

 あんなに終始ゴタゴタしていたヴィヴィでも、何とか第一志望の法学部への進学を決め。

 クリスも経済学部へ進む事が決まっていた。

 そして所属するキャンパスは、屋敷からすぐの駒場から、本郷へと移っていた。

「まあ、今は好きにして、いいんじゃない……?」

 兄は妹をそう言って甘やかし、ぽんぽんと頭を撫でてあやしたのだった。




 そしてクリスは、また出掛けて行った。

 しかも、

「ええと……、3日間、帰って来れないから……。何かあったら電話して……?」

 大きなスーツケースを抱え、そして何故かスーツ姿の双子の兄を、ヴィヴィは不思議そうに見送った。

 よって、ヴィヴィは1人でぼんやりする日が続いたのだが。

 そんな日が続けば、当たり前だが身体を動かしたくなる。
 
 天気の良い日は、目前のハイド・パークを徘徊し。

 雨の日は、ホテルのジムで汗を流した。

 不思議と、スケートをしたい気持ちにはならず。

 その他の時間は ただただ、うっそうと生い茂る緑を見つめて過ごしていた。

 すぐ傍にはバッキンガム宮殿、セントジェームズ・パーク、歴史ある博物館という、観光名所が乱立しているというのに。

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