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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 けれど、

 腑抜けていられるのも、残り日数が少なくなるにつれ難しくなってきた。

(……帰りたく……、戻りたく、ないな……)

 もはやヴィヴィの定位置となった、ハイド・パークを臨む白革の長ソファー。

 そこで三角座りをしたヴィヴィは、膝頭越しに見える公園の緑に瞳を細める。

 瞳子の妊娠を知ってから、ほぼ2ヶ月が経とうとしていた。

 その間、進級試験、世界選手権、国別対抗戦 と、慌ただしい日々を送りながらも、

 匠海と直接 話しもし、現実逃避をしながらも、何とか “結論” に辿り着いた。

 兄夫婦に子供がいる事実は変えられぬのだから、自分は身を引くべきだ、と。

 そして、

 匠海の裏切り行為を自分は決して容認出来ず、兄の求めるような関係修復は不可能だ、と。

 そう、思って。

 いや、だいぶ無理やり自分に思い込ませて。

 けれど、

 自分はそんなに物分かりの良い大人じゃない――。

 “結論” は結論で正しいと解ってはいても、

 心が着いて来ない。
 
 帰国すれば、

 すぐ近所に新居を構えた兄夫婦がいて。
 
 あと5ヵ月弱で、自分の甥か姪が誕生して。

 仲睦まじい新婚夫婦と、初孫を喜ぶ両親に囲まれて、

 自分も同じく振る舞わなければならない。

 そして、

 まだ捨てた妹に執着してくる、匠海の存在。

「………………っ」

 両脚を抱き締める腕に、ぐっと力が籠められる。

(嘘じゃ、無いの……。本当に、そう、思っては、いるの……)

 愛している匠海に幸せになって欲しい。

 自分があげられなかった幸福を、瞳子とその子供が与えてあげて欲しい。

 そして、自分に執着するのを止めて欲しい。

 そう思ってはいるのに。



 自分は嫉妬してしまっていた。



 兄の隣に当たり前の様に立つ瞳子に。

 自分の腹を愛おしそうに撫でる瞳子に。

 どう転んでも自分では叶わなかった、兄との結婚を成し遂げた瞳子に。

 そして、

 自分が咽喉から手が出そうなほど欲していた、兄からの指輪を贈られた瞳子に。

 自分はなんて、出来損ないの人間なんだろう。

 自分で決めた事も満足に出来なくて、

 結局はこうやって、周りを心配させて迷惑を掛けてしまう。

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