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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章
もう大人だから耐えられるけれど、やはり寂しくてしょうがない。
まさに “しょぼん(´・ω・`)” という顔でカレッジを辞去し、
駐車場へと戻るクリスの後を、ヴィヴィはとぼとぼ着いて行く。
「………………」
これで、いいのかもしれない。
もうクリスから離れたほうがいいのかもしれない。
今までも散々、双子の兄には迷惑を掛け、昨今ではお荷物以外の何者でも無くなっている自分。
傍にいたら無意識に甘え、また匠海との事で振り回してしまうかも知れない。
離れなきゃ。
1人立ちしなきゃ。
そして、クリスもそう思ったからこそ、
こんなギリギリになるまで、自分には留学を打ち明けて来なかったのだ。
「クリス、おめでとう! へへ、やっぱりクリスは超天才だったんだね~。オックスフォードだよ? 世界でも1・2を争うオックスフォード!! いやあ、ダッドも出来の良い息子を持って、鼻高々だね?」
動き始めたレンタカーの中、
ヴィヴィは精一杯明るい声で、クリスの健闘を讃える。
ちなみにオックスフォード大学は、匠海がMBA取得の為に1年間留学した母校でもあった。
「全然、天才……じゃ、ないけど……。でも、ありがとう、ヴィヴィ……」
進行方向を見つめながらも、クリスは心底嬉しそうに礼を口にした。
「実は、ここに連れて来たかった訳じゃ、なくて……。次が目的地、だったんだ……」
異国の地での運転にも慣れたもの。
クリスはナビに従って、危なげ無く車を走らせる。
「え? どこ……? あ……、もしかして、リンク……?」
大学を英国に移すという事は、所属リンクもこちらに移すという事だ。
クリスのコーチが、ジュリアンでなくなる――。
その事実の方が、オックスフォードへの留学よりも、ヴィヴィには驚きだった。
15分ほどして着いたのは、オックスフォード・SCという、広大な施設。
カレッジに囲まれた立地条件より、きっとアイスホッケーが盛んなのだろう。
国際規格のスケートリンクを2面要したそこは、付属設備も充実しており、理想的な環境だった。