この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章
そのまま凹み続けたヴィヴィは、
いつの間にやら両腕の中に突っ伏したまま、眠り込んでしまっていた。
「ヴィヴィ……。リンクに来ないと思えば、まさか、こんなところで寝てるとは……」
呆れた声で起こされたヴィヴィは、1時間ぐっすりだったテーブルからのっそり顔を上げる。
「ぅ、ん……? ……ありゃ……? クリス……、レッスンは?」
自分の目の前に腰を下ろしたクリスと、ガラス越しに眼下に広がるリンクとを交互に見つめる。
「ん……。ちょっと、休憩……」
「そっか……。ふわわ……、寝ちゃったぁ~」
両手で口元を覆ったヴィヴィは、涙目であくびをする。
リンクと違って、カフェは暖房がきき過ぎなほど暖かくて。
「ん~~」と呻きながら伸びをしていると、向いのクリスが黒い前髪の乱れを直してくれる。
「ヴィヴィ……、ここは日本じゃないんだからね……? 無防備に、こんなところで居眠りしてたら、危ないよ……?」
「……あ、うん……」
上に伸ばしていた両腕を下ろしつつ、素直に頷けば、
「それに、ヴィヴィは可愛いから、連れ去られるよ……」
「そ……、それは、ないんじゃない? ヴィヴィ、いくらなんでも暴れるよ?」
ヴィヴィはクリスほど寝起きが悪くないので、誰かに担ぎ上げられたら当然目を覚ます。
そう主張したヴィヴィに、クリスは小さく首を振る。
金色のサラサラの髪が、目の前で光を弾きながら揺れていた。
「本当に、ヴィヴィは危なっかしくて、放っておけない……。だから、一緒に、来ない……?」
「へ……?」
「どこに一緒に行くのだ?」と首を捻るヴィヴィに、
「一緒に、ここに留学しない……?」
クリスはそう言葉を正してきた。
「………………」
ヴィヴィはそのまま、固まってしまった。
双子の兄が口にした事が、にわかには信じられなくて。
(……ここ、に、留学、する……?)
きょとんとしていた小さな顔に、次に浮かんだのは当惑の表情で、
「え……っと、あの、その……ヴィヴィ、留学……手続き? してないけど……?」
それどころか、もう東大法学部への進路を決めて、既に授業も始まっている。
ただ今、絶賛サボり中――だが。