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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 そのまま凹み続けたヴィヴィは、

 いつの間にやら両腕の中に突っ伏したまま、眠り込んでしまっていた。

「ヴィヴィ……。リンクに来ないと思えば、まさか、こんなところで寝てるとは……」

 呆れた声で起こされたヴィヴィは、1時間ぐっすりだったテーブルからのっそり顔を上げる。

「ぅ、ん……? ……ありゃ……? クリス……、レッスンは?」

 自分の目の前に腰を下ろしたクリスと、ガラス越しに眼下に広がるリンクとを交互に見つめる。

「ん……。ちょっと、休憩……」

「そっか……。ふわわ……、寝ちゃったぁ~」

 両手で口元を覆ったヴィヴィは、涙目であくびをする。

 リンクと違って、カフェは暖房がきき過ぎなほど暖かくて。

 「ん~~」と呻きながら伸びをしていると、向いのクリスが黒い前髪の乱れを直してくれる。

「ヴィヴィ……、ここは日本じゃないんだからね……? 無防備に、こんなところで居眠りしてたら、危ないよ……?」

「……あ、うん……」

 上に伸ばしていた両腕を下ろしつつ、素直に頷けば、

「それに、ヴィヴィは可愛いから、連れ去られるよ……」

「そ……、それは、ないんじゃない? ヴィヴィ、いくらなんでも暴れるよ?」

 ヴィヴィはクリスほど寝起きが悪くないので、誰かに担ぎ上げられたら当然目を覚ます。

 そう主張したヴィヴィに、クリスは小さく首を振る。

 金色のサラサラの髪が、目の前で光を弾きながら揺れていた。

「本当に、ヴィヴィは危なっかしくて、放っておけない……。だから、一緒に、来ない……?」

「へ……?」

 「どこに一緒に行くのだ?」と首を捻るヴィヴィに、

「一緒に、ここに留学しない……?」

 クリスはそう言葉を正してきた。

「………………」

 ヴィヴィはそのまま、固まってしまった。

 双子の兄が口にした事が、にわかには信じられなくて。

(……ここ、に、留学、する……?)

 きょとんとしていた小さな顔に、次に浮かんだのは当惑の表情で、

「え……っと、あの、その……ヴィヴィ、留学……手続き? してないけど……?」

 それどころか、もう東大法学部への進路を決めて、既に授業も始まっている。

 ただ今、絶賛サボり中――だが。

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