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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

「うん……。だから、今から留学準備、こっちでしながら生活して。来年の秋口の編入、目標にすれば……?」

 そう とつとつと説明するクリスの表情は、いつも通り無表情で。

 何だか、話がやばい方向へ進んでいる気がするぞ。

「…………ええ、と」

「うん……?」

「まさか……。まさか、と思うんですけど……、その、編入先って……」

 暑くもないのにヴィヴィのこめかみに、じわりと嫌な汗が浮かぶ。

「もちろん、オックスフォード大学に、決まってるでしょ……」

「―――っ はぁああああ~~っ!?」

 しれっと無茶を言ってのける双子の兄に、ヴィヴィは大絶叫してしまい。

 あまりの大声に我に返って周りを見渡せば、カフェの客がじろじろと双子を見比べていた。

 「すみません、すみません」と謝るヴィヴィに、クリスは我関せずで話を進める。

「そう不可能な話じゃ、ないんだよ……。だってヴィヴィ、BST在学中、Aレベル、取ったでしょう……?」

「え……? あ、う、うん……」

 Aレベル――正式名は、GCE-Aレベル(General Certificate of Education, Advanced Level)。

 英国では16歳で義務教育を修了する際、GCSEを受験するが。

 その後、更にシックスフォームと呼ばれる課程で、2年間の高等教育を受ける。

 選択科目を3~5科目に絞り、専門的に勉強し。

 その最終試験の結果はA~Eのグレードで評価され、これがいわゆる “英国での大学入試” に相当する。
 
 BSTは英国のインターナショナルスクール。

 その教育方針で、双子はそのGCEを学習し、最高のAレベルを取得していた。

 ちなみに、その難度の指標は下記の通り。

・GCSE Aレベル = 「高等教育終了資格」

・GCE  Aレベル = 「日本の大学1・2年の教養課程レベルに相当」
 
 つまり――、

 ヴィヴィは “オックスフォード大学の入学基準” を満たしてはいる。

 満たしてはいる――が。

「そんな、無茶苦茶、な……」

 東大受験の時といい、クリスは時々とんでもない事を言ってくれる。

 どうやら、ヴィヴィが自分と同じく頭が良い、と思い込む癖があるらしく。

(いやいやいやいや……。いくら双子だからって、そこまで一緒とは限んないから……)

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