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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第33章        

 そこでふと手を止めた朝比奈だったがそれも一瞬で、躊躇なく白いタイトスカートのホックを外し、スカートを足から引き抜いた。白シャツとストッキングだけという人様には見せられない姿になったヴィヴィに上掛けをそっと掛けた朝比奈は、脱がせた服を腕に掛けると一歩下がり一礼する。

「お疲れ様でした、お嬢様」

 そう小さく囁いた朝比奈は、寝室の照明を落として部屋を後にした。






「むにゃむにゃ……よく寝た……」

 きっかり3時間後に目を覚ましたヴィヴィは両腕を上に上げてう~んと伸びをすると、すっきりした頭でバスルームへと向かう。さすが小さい頃からヴィヴィの生活パターンを把握している朝比奈は、主の睡眠時間を計算したようにバスタブに暖かい湯をはってくれていた。

 ヴィヴィはシャツとストッキング、下着を脱ぎ去ると白濁の湯に身を委ねる。適度な湯加減と大好きなバスソルトの香りに、ヴィヴィの顔がこれ以上ないほど緩む。

「ふぁ~~……やっぱりおうちが一番!」

 そう幸せそうに呟いたヴィヴィの言葉を、いつの間にかバスルームの外で待機していた朝比奈が聞きとめ小さく笑みを浮かべた。

 その後軽食を取って松濤に練習の為に向かったヴィヴィは、入り口で数人のカメラマンに写真を撮られるのを牧野マネージャーに庇ってもらいながら裏口から入った。

「なんか……凄いですね……」

 建物の中に入ったヴィヴィは、まるで他人事のように牧野マネージャーに呟く。グランプリファイナル優勝の後や全日本選手権優勝の後でも、これほどまでメディアに追っかけられたことはなかった。

「たぶん4月のシーズンオフまではずっとこんな調子だろうね。でも面倒くさくても、マスコミの前では笑顔を忘れないように!」

 マネージャーのその一言に、先ほど引きつった笑みを浮かべてしまった自分を思い出したヴィヴィは「はい」と素直に頷いた。

 念入りにストレッチをしてリンクアリーナに入ると、ヴィヴィの周りにはリンクメイトがわっと寄ってきた。

「きゃ~~っ! ヴィヴィだっ!!」

「おめでとう! もうオリンピックメダリストなんだよね~、なんか不思議」

「俺、テレビの前でめっちゃ応援してたよ!」

「FPのラスト、見てるこっちまで超緊張したんだよ!!」

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