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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章
(う゛ぅ……。いいなぁ……。帰り、どっかで買おうかな……)
けれど、その1分後。
ヴィヴィを追い駆けて来た佳苗の両手には、綺麗に半分こにされたアサイーボウルがあった。
何故か仏頂面でずいとボウルを押し付けてくる佳苗に、ヴィヴィはこてと金の頭を倒し。
思わず受け取ってしまったヴィヴィに、その人は背を向けて無言で去って行こうとしていた。
だから、
『……――っ す、座りましょうっ!』
気が付けば、ヴィヴィはそう発していた。
それもかなりの大声で。
『…………へ…………?』
狐につままれた表情で振り向いた佳苗。
『座って食べましょう! ここ、ここがいいですっ』
『…………はぁ…………』
腕を握って近くのベンチへ連れて行くヴィヴィに、佳苗は呆気に取られてされるがままだった。
『いただきま~すっ!』
ベンチに並んで腰掛け、ヴィヴィが嬉しそうに食べ始めれば、溶け始めたそれに気付いた佳苗も黙々と食べ始め。
『ん~~っ 美味しい♡』
ほっぺを押さえて悶絶するヴィヴィは気付かなかったが、
多分香苗は、無防備過ぎるヴィヴィに毒気を抜かれてしまったのだと――今になって思えば、そう解る。
『……悪かった……』
半分こしたそれを食べ終えた頃、そうぼそりと呟いた佳苗。
『へ……?』
奢って貰ったのに何故か謝られたヴィヴィは、間抜けな声を上げたが、
『悪かったわ……。1年間……』
その謝罪の意味する事が解かり、ヴィヴィは言葉を失った。
そのまま佳苗は席を立ち、ベンチから離れて行ってしまい。
『あっ!』
大切な事を忘れていたヴィヴィは、また大声を上げる。
『………………?』
ちらりとこちらを振り返った彼女に、ヴィヴィは綺麗に食べ終えたプラスチックのボウルを見せる。
『これ、御馳走様でした』
ヴィヴィとしては、当然の礼を言っただけだったが。
『……――っ はぁ……』
絶句した後、何故か嘆息した佳苗は、そのままその場を後にし。
3年に進学し本郷キャンパスへと移動した彼女達とは、その後一度も会う事は無かったのだ――。