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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章
「なにぶん臨時の記者会見ですので、ご質問は所属と氏名を頂きました上、1社1問でお願いします。また、フィギュアスケートと関係の無いご質問は、お控え下さい」
そう牧野が断った瞬間、取材陣が一斉に挙手する。
「ニッポンテレビ、NEWS EVERYDAYの加藤と申します。ヴィクトリア選手は、五輪個人戦での結果が、渡英の理由ですか?」
最初の質問者を見据え、ヴィヴィはマイクを握ると慎重に言葉を選ぶ。
「違います。確かに個人戦FPの滑りは酷いものでしたが、五輪の団体戦や世界選手権では、及第点を自分で与えられるレベルだったと……今から振り返れば思っています」
硬い表情で語るヴィヴィに、目が開けられないほどのフラッシュが焚かれていた。
「TVSの安藤と申します。一部ではお2人とも英国のスケート連盟に移籍するのでは? という報道もありますが? 如何でしょうか?」
ヴィヴィは初耳だったその質問には、クリスがマイクを受け取って答え始める。
「それは現時点ではありえません。日本の連盟には今まで沢山支えて貰いましたし、また、移籍する理由も見当たりません」
冷静に答えたクリスに対し、新たに何本もの腕が挙手される。
「報知スポーツの田所です。国籍はどうされるのですか? お2人とも日本国籍と英国国籍を持っていますよね? 22歳に達するまでに、国籍の選択をしなければならない筈ですが?」
どうして、そんな立ち入った事まで聞かれなければならないのだろう。
ヴィヴィが微かに眉根を寄せる中、クリスは握っていたマイクで続ける。
「僕達はまだ20歳にもなっていません。それにこれはプライベートな問題ですので、回答は控えさせて頂きます」
クリスの当然の返答に、司会の牧野マネージャーも、
「個人的な事に関する質問はお控え下さい」
再度釘を刺した。
「富士テレビの軽部です。新しい英国人のコーチは、ジュリアン元コーチの恩師でいらっしゃるようですが、もうお会いにはなりましたか? もし会われていましたら、その時の印象も合わせてお願いします」