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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

「確か、英国で生活を送られた事は無い、とお聞きしていますが?」

 三田ディレクターのその助け舟に、ヴィヴィはこくりと頷き。

「生活基盤をなるべく早く整えて……、とにかく落ち着いて、スケートがしたいです――」

 そう答えたヴィヴィの心は本物で、

 出来る限り一刻も早く、この日本を離れてしまいたいと切に願っていた。







 4月の最終週――双子の渡英1週間前。

 双子はスポンサーのCMを撮ったり、また各スポンサーに渡英前の挨拶に伺い、忙しく過ごしていた。

 また、ミュンヘン五輪・パラリンピック入賞者に対する記念品贈呈式の為、総理官邸を訪問する機会もあり。

 それと同時に、各々で渡英準備を進めていた。

 そんな中、ヴィヴィは自分の事ばかりに一杯いっぱいで、

 五輪後 一度も児童養護施設 新緑寮へ行けていない事に気付いた。

「ねえ、朝比奈?」

 執事と一緒に英国に持って行く物を選んでいたヴィヴィが、自室のリビングで呟く。

「何でございましょう、お嬢様」

 ヴィヴィはリストアップされた書面から顔を上げ、おもむろに立ち上がる。

「ん……。寄付って、ご迷惑かな……?」

「寄付、でございますか?」

 予想外の質問に、朝比奈が繰り返してくる。

「うん。ヴィヴィが遊びに伺ってる新緑寮……。これからほとんど、行けなくなっちゃうし……」

「そうですね」

 朝比奈の目の前、ヴィヴィはガラス張りの白キャビネットに近付き、観音開きの扉を開ける。

「これ……、沢山あるし。もしオークションとかに賭けたら、幾らか値段つくかな?」

 そう言いながらヴィヴィが手にしたのは、これまでの国際試合で贈呈された腕時計の1つだった。

「それは名案ですね。では、頂いたメーカーに直接問い合わせてみては如何でしょう? きっと、お嬢様の意志にご賛同頂けると思いますよ?」

「ん、そうだね、そうしてみる。ありがとう」

 執事の助言通り、ヴィヴィはその日の内に(株)シチズンの広報部へと連絡を取った。

 数日後に届いた返事から、ヴィヴィが手離す覚悟のある13個の腕時計は、(株)シチズンとヴィヴィの連名でオークションを開催し。

 その売上金を児童養護施設へと寄付する事で、話が纏まった。




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