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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 渡英前の1週間は本当に目が回る様な忙しさで、あっという間に過ぎて行った。

 顔を出せていなかった東大スケート部へ挨拶に行けば、女子部員全員に泣かれてしまい。

 新緑寮でも子供達に号泣され。

 けれど「帰国したら絶対に会いに来るから」と、皆に納得して貰えるまで話をするしかなかった。

 そんな多忙の中、まだ一部のメディアはヴィヴィの事について執拗に取り上げていた。

『クリス選手はオックスフォード大学への編入が確定しているが、東大を休学するだけのヴィクトリア選手までもが、渡英するのはおかしい』

 記者会見で話せることは説明したのに、以降も付き纏うマスコミに、ヴィヴィの不信感は膨らむ一方で。

(どうして、ヴィヴィのプライベートにまで、ずかずか入り込んで来るんだろう……。

 どうして、ヴィヴィが渡英するのに、周りに意見されなければいけないんだろう……)

 マスコミがそんなに騒ぐという事は、その先にいる視聴者も、ヴィヴィについてそう思っているのだろうか。

 こんなにスケート以外の事に干渉されるならば、

 いっそのこと英国の国籍を選択し、英国のスケート連盟に移籍しようか――とまで思い詰めていた。

 匠海のこと。

 自分のこれからのこと。

 それだけでも一杯いっぱいのヴィヴィにとって、日本のマスコミはどんどん遠い存在になっていき。

 やがて、

 テレビのスポーツ番組やフィギュア雑誌の馴染みの取材陣に対しても、

 ヴィヴィは警戒して、笑顔を見せなくなっていった。 




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