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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章          

 そんな中、ヴィヴィのささくれ立った心を慰めてくれたのは、ファンからの手紙だった。

『どうか、誤解しないで下さい。

 日本人は、メディアが悪騒ぎしているような酷い事を、

 貴女に対して思ってはいません。

 私は貴女を初めて知った時から、ずっと大好きです。

 けれどそれは、

 トップ選手だから好きになったんじゃない。

 メダルを獲れる人だから、応援してきた訳じゃない。

 ただ、篠宮 ヴィクトリアのスケートに、魅了されたから。

 篠宮 ヴィクトリアの演技が好きだから。

 だから、ずっとファンでい続けたいだけなんです。

 無理に笑わなくていいです。

 話したくない時は、話さなくていいです。

 辛い時は、辛いって言って下さい。

 だって、貴女はただの19歳の女の子なのですから』

 他にも沢山、心無いメディアの報道に「日本のファンに失望しないで下さい」との手紙が山の様に届き。
 
 その手紙と周りの皆に支えられ、

 ヴィヴィは日本滞在の最後の1週間を、なんとか乗り切る事が出来たのだった。






 そして迎えた、5月1日(日)。

 篠宮邸では双子の誕生日パーティーが執り行われていた。

 昼から始まったそれを彩るのは、ヴィヴィ自らお願いした 白砂 今 & 中居 智弥による、ヴァイオリンと二十五絃箏の調べ。

 英国式の内装の篠宮邸には、和の佇まいの華が多く飾られ。

 主役である双子も、紋付き袴と振袖という出で立ちだった。

「ヴィヴィ、超似合う~~っ!! すっごく綺麗~!」

 真行寺 円が、招待の礼を述べるよりも早く、瞳を輝かせてヴィヴィの和装を褒めてくれた。

「うん、黒髪だから、余計に着物が映えるね」

 兄の太一も、うんうんと誇らしげに頷いていて。

「ありがとう! うふふ、ヴィヴィ、いっつも着物には黒髪って思ってたんだ~♡」

 手離しで喜ぶヴィヴィの隣、金髪に紺色の袴姿のクリスは「どうせ……」としょげていた。

 パーティーは、BSTの元クラスメイト、東大のクラスメイト、スケート関係者で溢れていた。

 そのほとんどの客に、渡英の事を面と向かって報告出来ていなかった双子は、

 大忙しで各人に連絡が出来なかった謝罪と礼をして回ったのだった。

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