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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第113章
3時間のパーティーもあっという間に終わりを迎え、双子は招待客を玄関先で見送った。
多くの友人が「オックスフォードに遊びに行くから、泊めてよね!」と言ってくれて。
双子は「「待ってる」」と口を揃えて喜んだのだ。
客人が帰途に就いた頃、ヴィヴィは本日のパーティーに花を添えてくれた白砂のところに礼を言いに行った。
「今(こん)先生。今日は本当にありがとうございました」
3ヶ月ぶりに対面出来た白砂は、疲れも見せず余裕そうに にやりと笑う。
「いえいえ、どう致しまして。しかし、これが最後とは寂しいね」
「………………」
当たり前だが、もう白砂のヴァイオリンとピアノのレッスンは受けられない。
その寂しさに、ヴィヴィは何も言えずに結い上げた黒い頭で頷く。
「はは。そう今生の別れみたいな顔しないで。日本でアイスショーやら試合やら、ちょくちょくあるんだろう? その時は、俺にも会ってくれるよね?」
ぽんぽんと頭を撫でてくる白砂に、
「はい。必ずやっ!」
ヴィヴィは勢い良く返事する。
「それに今度会った時こそ、ヴィヴィは正真正銘の成人だ。お酒飲みに行こう」
「あはは、それもそうですね」
実は今の時点では、ヴィヴィは19歳なのだ。
クリスは5月1日生まれ。
ヴィヴィは5月2日生まれ。
本日の日付が変われば、ヴィヴィも晴れて成人の仲間入り。
誰にも文句を言われずに、飲酒出来る年齢となる。
「その時は、俺、ヴィヴィを酔わせて “お持ち帰り” しようかな?」
「へ?」
( “お持ち帰り” ……? って……ああ……)
白砂のその言葉に、昔の記憶が蘇える。
『ジュースと偽って酒飲ませて酔っぱらわされた上に、
野郎の家に連れて帰られて、強引にセックスされる』
“お持ち帰り” という言葉さえ知らなかった世間知らずの妹に、兄であるその人はそう説明していたっけ。
微妙な表情を浮かべるヴィヴィの目線に合わせる様に、背の高い白砂が腰を折って覗き込んで来る。
「だって、妹の素行に五月蠅いあの “お兄ちゃん” は、結婚してもうここにはいないんでしょ?」
「……はい」
確かに。
もう匠海はこの屋敷にも、そしてヴィヴィの隣にもいない。